2000 Fiscal Year Annual Research Report
亜社会性ハダニのオスに作用する性選択とその逆方向選択の実証的研究
Project/Area Number |
11640626
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
齋藤 裕 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (20142698)
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Keywords | 性選択 / 攻撃性 / ハダニ / 亜社会性 |
Research Abstract |
平成12年度は、ススキスゴモリハダニのオスにみられる攻撃性の異なる2グループについて、それらがどのような存在なのかを、生殖的隔離の面から追求し、攻撃性の弱いグループと強いグループの間には明瞭な遺伝的隔離が存在し、今後は亜種あるいは別種として扱うべきであることを明らかにした。 これらの結果から、オスの攻撃性と性選択強度の関係は、グループごとに検討すべきことが判明したので、諸地域で採集した標本をグループ別に分け、それぞれについてオス標本(現存オス)および現地で飼育によって得たオス標本(潜在オス)を逐次標本として、性選択にかかわる形態の特定を試みた。その結果、攻撃性の強いグループではオスの第1、2脚が、他の形質に較べて極端に発達しており、それが性選択に強く関わっていることが判明した。 そこで、さらに群しく個体群内での形態測定を実施した。分析はまだ一部にとどまるが、九州や本州で採集された標本においては潜在オスの性選択にかかわる形質分布が1山型の正規分布を示すのに対して、南西諸島西表島で採集した潜在オスの当該形質には2山型の分布を示すことがわかった。このことは、オスの攻撃性が極端に強い亜熱帯域において、同性内性選択がオスに2形性を生み出している可能性を示唆した。 実験室における交尾成功度とオス・メスのサイズ変異の分析を行った。発育期間における栄養状態を変えることで、ほぼ30%サイズ変動のあるオス・メスを作出し、それらの間での交尾成功度を測定した。その結果、すくなくとも24時間の交尾期間では、組合せ間の交尾成功度に有意な差が認められなかった。しかし、通常数分で完了する交尾時間に対して、実験した時間が長すぎ、仮に組み合わせ間で交尾成功に差があったとしても、それが隠されてしまった可能性を否定できない。この問題は、雌雄をペアーとする時間を短縮することで、今後さらに追求していく必要がある。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Saito, Yutaka: "Inbreeding depression by recessive deleterious genes affecting female fecundity of a haplo-diploid mite."J.Evolutionary Biology. 13. 668-678 (2000)
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[Publications] Saito, Yutaka: "Correspondence of male-to-male aggression to spatial distribution of individulas in field populations of a subsocial spider mite."J.Ethology. 18. 79-83 (2000)
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[Publications] Sato, Yukie: "Reproductive isolation between populations showing different aggression in a subsocial spider mite, Schiozotetranychus miscanthi Saito (Tetranychidae: Acari)."Applied Entomology and Zoology. 35. 605-610 (2000)
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[Publications] Sato, Yukie: "Patterns of reproductive isolation between two groups of Schizotetranychus miscanthi Saito (Tetra-nychidae : Acari) showing different male aggression traits."Applied Entomology and Zoology. 35. 611-618 (2000)
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[Publications] Saito, Yutaka: "Do kin selection and itra-sexual selection operate in spider mites?"Experimental and Applied Acarology. 24. 351-363 (2000)