1999 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物における2つの異なるチラコイド膜糖脂質合成経路の分子細胞生物学的再検討
Project/Area Number |
11640644
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
太田 啓之 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (20233140)
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Keywords | 葉緑体 / 糖脂質 / モノガラクトシルジアシルグリセロール / 糖転移酵素 / チラコイド膜 |
Research Abstract |
[目的]高等植物やラン藻など光合成生物の光合成の場となるチラコイド膜の主要糖脂質であるmonogalactosyldiacylglycerol(MGDG)の生合成については、その存在量の多さ(葉緑体脂質の50%)や光合成機能との関係から、多くの研究がなされている。古典的な代謝レベルでの案験から、シロイヌナズナやホウレンソウなどの植物では葉緑体の内側と外側で行われる2つのMGDG合成経路が存在すること、またキュウリなどの植物では葉緑体外の経路しか持たないことがわかっている。葉緑体内での経路は原核型経路、葉緑体外での経路は真核型経路と名付けられ、植物脂質代謝を特徴づける最も重要な経路として周知の事実となっている。このように、2つの異なるMGDGの合成経路の存在が広く知られながらも、この2つの経路がどのような違いに基づいているのか、あるいはなぜこのように植物によって異なる経路が存在するのか、さらにそれらの経路がどのように制御されているかなどの点は全く分かっていなかった。本研究では、これら2つの葉緑体主要脂質合成経路に関する古典的知見を申請者らの得たMGDG合成酵素遺伝子ファミリーを鍵として、生化学的、分子生物学的、細胞生物学的な手法から再検討し、植物脂質代謝を特徴づけるこれら2つのMGDG合成経路の違いやその生物学的意義、その制御機構を明らかにすることを目的として研究を行った。 [結果]これまでシロイヌナズナからMGDA,MGDBの2種のMGDG合成酵素遺伝子を単離していたが、今回新たに3つ目の遺伝子MGDCを単離した。これら3種の遺伝子産物について、細胞内局在性等について調べたところ、これら全ては葉緑体包膜に局在していることが分かった。また、それぞれの組織特異的発現についても調べた。その結果、MGDAは全ての組織で高い発現を示したのに対して、MGDBについては花芽で、MGDCについては子葉および根でそれぞれ最も高い発現を示した。これらのことから、主に葉緑体形成時の糖脂質合成についてはMGDAが機能しており、MGDB,MGDCについては、異なる組織でそれぞれ特異的な役割を担っていると考えられる。
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[Publications] Christine Miege: "Biochemical and topological properties of type A MGDG synthase,a spinach chloroplast envelope enzyme catalyzing the synthesis of both prokaryotic and eukaryotic MGDG"Eur.J.Biochem.. 265. 990-1001 (1999)
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[Publications] Hiroyuki Ohta: "Advances in Plant Lipid Research"Secretariado de Publicaciones,Universidad de Sevilla. 723 (1998)
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[Publications] Christine Miege: "Advances in Plant Lipid Research"Secretariado de Publicaciones,Universidad de Sevilla. 723 (1998)