1999 Fiscal Year Annual Research Report
光合成細菌の電子伝達タンパク質における個々のアミノ酸の役割
Project/Area Number |
11640652
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松浦 克美 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (30181689)
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Keywords | 光合成 / 電子伝達 / 電子移動 / チトクロム / 反応中心 / タンパク質 |
Research Abstract |
光合成電子伝達系における,タンパク質に含まれる個々のアミノ酸の役割を明らかにするために,光合成反応中心に結合したチトクロムを遺伝的に改変する実験系を活用し,進化の過程で保存されているアミノ酸の役割を明らかにすることを目的とした.紅色光合成細菌を用いて以下の成果を得た. (1)光合成反応中心結合型ヘムが可溶性チトクロムcから電子を受け取る部位を先の研究で報告したことを受け,その部位で表面に側鎖が出ているアミノ酸(約15個)をすべて改変し,それぞれのアミノ酸の重要度を調べた.その結果,可溶性チトクロムcとの反応のためには,これまで予想されていたように負の電荷をもったアミノ酸が重要であることが確認された.一方,可溶性チトクロムcの代わりになる鉄イオウタンパク質の場合は,予想に反し,疎水性のアミノ酸が主要な役割を演じていることが発見された.この発見は,タンパク質間相互作用一般に適応できる重要な知見である.また,両者の反応部位がほとんど重なるにもかかわらず反応に関与するアミノ酸が異なることは,タンパク質の進化の観点からも興味深い. (2)表面アミノ酸改変による人工的反応部位の作成を進めるために,自然突然変異により反応部位が変化したと考えられる細菌のタンパク質の解析を進めた.普通の4つのヘムの代わりに3つのヘムを持つチトクロムが,確かに機能していることを,突然変異による欠損株の作成により確認した.また,その特異なチトクロムは,1つの生物種のみに存在するのではなく,近縁の数種に同じものが発見され,自然突然変異で獲得されてから少なくとも数億年経過していると考えられた.今後,その表面アミノ酸を解析し,人工的な反応部位作成の実験に進む予定である.
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[Publications] Osyczka,A.,: "Comparison of the binding sites for high-potential iron-sulfur protein and cytochrome c on the tetraheme cytochrome subunit bound to the bacterial photosynthetic reaction center."Biochemistry 38,15779-15790. (1999)
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[Publications] Masuda,S.: "Transcriptional control of the expression of genes for photosynthetic reaction-center and light-harvesting proteins in the purple bacterium,Rhodovulum sulfidophilum."J.Bacteriol.. (in press). (2000)