1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640654
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
保尊 隆享 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (70135771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 和幸 大阪市立大学, 理学部, 講師 (10220831)
神阪 盛一郎 大阪市立大学, 理学部, 教授 (60047214)
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Keywords | 細胞壁 / 細胞壁伸展性 / 温度 / 環境シグナル / アズキ上胚軸 / イネ幼葉鞘 / 浸透圧 / 成長調節 |
Research Abstract |
本研究の目的は、植物が主な環境要因である温度シグナルに応じてどのように細胞壁の性質を変化させ、生理機能を調節しているかを解明することにある。そのために、温度要求性及び細胞壁構造が異なるアズキ並びにイネの芽ばえを様々な温度条件下で生育させ、成長速度、浸透圧、及び細胞壁の物性を測定した。 両植物の芽ばえを暗所10〜50℃の温度範囲で生育させたところ、アズキ上胚軸の成長速度は30℃で、またイネ幼葉鞘の成長速度は40℃で最も大きく、この最適温度から離れるにしたがって低下した。各温度で生育しているアズキ上胚軸及びイネ幼葉鞘から細胞液を調製し、その浸透圧を蒸気圧浸透圧計を用いて測定した。浸透圧は、成長速度の低い低温あるいは高温条件下でむしろ高く、これが成長を律速しているわけではないことが示された。一方、引っ張り試験機を用いて測定した細胞壁伸展性は、両器官とも、成長の最適温度において最も大きく、この温度から離れるにしたがって低下していた。成長速度と細胞壁伸展性との間には高い相関が見られた。各温度で数〜十数時間生育させた芽ばえを最適温度に移すと、細胞壁伸展性が増加して成長速度が高まったことから、温度条件による細胞壁伸展性の違いは代謝系の不可逆的な変化ではなく、その速度の違いに基づくことが示唆された。以上の結果より、10〜50℃の温度範囲では、アズキ上胚軸及びイネ幼葉鞘の成長速度は細胞壁の物性によって規定されており、細胞液の浸透圧は、温度に敏感な細胞壁代謝とあまり温度の影響を受けない浸透物質供給機構のバランスによって決まることが明らかになった。
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