2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640654
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
保尊 隆享 大阪市立大学, 理学部, 教授 (70135771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 和幸 大阪市立大学, 理学部, 講師 (10220831)
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Keywords | 細胞壁 / 細胞壁伸展性 / 温度 / 環境シグナル / イネ幼葉鞘 / (1→3),(1→4)一β-グルカン / グルカナーゼ / 成長調節 |
Research Abstract |
本研究の目的は、植物が主な環境要因である温度シグナルに対してどのように細胞壁の性質を変化させて応答するかを解明することにある。昨年度は、10〜50℃の温度範囲で植物芽ばえの成長速度が細胞壁伸展性によって調節されていることを明らかにした。本年度は、特にイネ幼葉鞘を用い、細胞壁伸展性を決定する細胞壁多糖代謝に対する温度の影響を検討した。 まず、暗所10〜50℃の温度範囲で生育したイネ幼葉鞘の各細胞壁多糖のレベルを測定した。細胞壁多糖の単位長さ辺りのレベル、すなわち厚みは、成長速度の大きい40℃で生育した幼葉鞘で最大であり、この最適温度から離れるにしたがって減少した。すなわち、この場合、細胞壁多糖の蓄積量は細胞壁伸展性を決める要因ではない。そこで、次に、もう一つの主要なパラメータである細胞壁多糖の分子サイズに着目した。各温度下で生育しているイネ幼葉鞘細胞壁からヘミセルロース性多糖類を抽出し、HPLCを用いてその分子量を調べたところ、平均分子量は最適温度下の幼葉鞘で最も小さく、この温度から離れるにしたがって増大していた。特に、最も高分子である(1→3),(1→4)-β-グルカンの分子量が生育温度に応じて変化した。そこでさらに、各幼葉鞘から細胞壁タンパク質を抽出し、(1→3),(1→4)-β-グルカナーゼ活性を測定した。活性は最適温度下の幼葉鞘で最も高く、この温度から離れるにしたがって低下した。ヘミセルロース性多糖類の平均分子量と細胞壁伸展性、またグルカナーゼ活性と伸展性との間には高い相関が見られた。以上のように、10〜50℃の温度範囲で生育したイネ幼葉鞘では、グルカナーゼの活性変動によって(1→3),(1→4)-β-グルカンの分子量変化が起こり、その結果細胞壁伸展性が変化するために成長速度が調節されることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)