2000 Fiscal Year Annual Research Report
光合成色素の抽出再構成による人工的な光化学系I反応中心の構築
Project/Area Number |
11640656
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
池上 勇 帝京大学, 薬学部, 教授 (10082322)
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Keywords | 光合成 / 光化学系I / クロロフィル / 光化学反応中心 / P700 / 光合成初期反応 / 光合成色素 / 電子伝達 |
Research Abstract |
植物に吸収された太陽光エネルギーは光化学反応中心に伝達され、そこで化学エネルギーに変換される。高等植物の光化学系I反応中心は、80kDaの大きさを持つ2つのポリペプチド(PsaA/B)から構成されている。その中心部に6分子の反応中心Chl(初期電子供与体(P700)、初期電子受容体(A_0)、およびその間での電荷分離を仲介する補助色素(A)(各2分子ずつ))が結合している。一方、光化学系I反応中心ポリペプチドの周辺部には約100分子のアンテナChl aが結合し、これらのChlに吸収された光エネルギーは反応中心Chlの最も近くに位置しているアンテナChl(Chl c)を介して反応中心Chlへ伝達される。本年度は、この光化学系IからアンテナChl aの大部分をエーテル処理によって除去し、本来反応中心ポリペプチドに存在しないChl bを再結合させることにより、人工的な光化学系Iを構築しその性質を調べた。(1)Chl bをリン脂質PGと共に加えることにより、P700当たり9-14分子のChl bが結合した。(2)P700の光酸化速度をChl aとbを共に励起する380-480nm光により測定したところ、その量子収率はChl bの結合した割合分だけ増加した。即ち、結合したChl bは抽出されないで残っているChl aとほぼ同等のアンテナ機能を持つことが示された。(3)Chl aのケイ光(Fl680)の励起スペクトルはChl bが吸収を持つ480nmにmain peakを持つことから、結合したChl bは効率よくChl aへ励起エネルギーを伝達していることが示された。(4)P700がemitterであるとされるケイ光(Fl695)の励起スペクトルにたいしてもChl bはChl aとほぼ同等のアンテナ機能を持つことが認められた。(5)したがって、Chl bはChl aの結合部位にChl aの代わりに結合し、その一部はP700のかなり近傍に結合してChl aと同等のアンテナとして働き得るものと推定された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ikegami,I: "Selective Extraction of Antenna Chlorophylls, Carotenoids and Quinones from Photosystem I Reaction Center"Plant and Cell Physiology. Vol.41. 1085-1095 (2000)
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[Publications] Kumazaki,S.: "Observation of the Excited State of the Primary Electron Donor Chlorophyll (P700) and the Ultrafast Charge Separation in the Spinach Photosystem I Reaction Center"J.Chem.Phys.B. Vol.105. 1093-1099 (2001)
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[Publications] Itoh,S.: "Modification of Photosystem I Reaction by the Extraction and Exchange of Chlorophylls and Quinones"Biochim.Biophys.Acta. (In press). (2001)
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[Publications] Ikegami,I.: "光合成の初期過程はどこまで明らかになったか?-光化学系Iの解析から言えること-"光合成研究会会報. Vol.30. 3-10 (2001)
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[Publications] Ikegami,I.: "光化学系I反応中心における励起エネルギー移動と初期電荷分離"ユーグレナ研究会会報. (In press). (2001)