2001 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系による生殖制御とその性分化におけるセロトニンニューロンの役割
Project/Area Number |
11640669
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山内 兄人 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (10053357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚原 伸治 早稲田大学, 人間総合研究センター, 助手 (90318824)
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Keywords | 母性行動 / 正中縫線核 / ロードシス / 中隔 / 中脳中心灰白質 / エストロゲン受容体 / 雌雄差 / 性分化 |
Research Abstract |
本年度は、母性行動に対する縫線核の役割を確定した。出産直後のラットの背側縫線核か、正中縫線核を高周波破壊し、1週間単独飼育後に、リトリービングとリッキングの発現を調べた。その結果、背側縫線核を破壊されたラットはリトリービングもリッキングも正常にみられたが、正中縫線核を破壊されたラットはそれらの行動をほとんど示さなかった。さらに、正中縫線核の背側部か腹側部の水平切断をして同様のテストを行った結果、腹側部切断は正中縫線核破壊と同様に行動の低下を引き起こした。この結果から、正中縫線核の機能はリトリービングとリッキングの発現に欠かすことのできないものであり、腹側部出入力神経線維がその機能に関与していることが考えられる。 雄ラットが雌の性行動であるロードーシスをしないのは、中隔と背側縫線核の抑制力のためである。今年の研究では、中隔の抑制力について新たな知見を得た。雄ラットの中脳中心灰白質に逆行性神経トレーサーを注入すると、中隔中間部に免疫陽性細胞が検出できる。中隔の腹側部を水平切断すると雄でもロードーシスをするようになるが、トレーサーを中脳中心灰白質にいれても、中隔には陽性細胞が検出できない。これらの結果により、ロードーシス抑制力を形成する神経細胞は中隔の中間部に存在し、神経線維を直接中脳中心灰白質に出していることが明らかとなった。順行性トレーサーを中隔に入れた結果、免疫陽性神経線維の走行は中隔腹側部より下降し、視交差レベルでは内側前脳側に入り、すぐに内側前脳側から離れて、後視床下部を上行して、中脳中心灰白質の前方に達することが示された。さらに、雌雄ラットを用いて、逆行性神経トレーサーを中脳中心灰白質に注入し、トレーサーとエストロゲン受容体の二重免疫組織染色を行い、二重染色された細胞数の雌雄差を測定した。その結果、中脳中心灰白質に神経連絡を持つ中隔中間部の神経細胞数は雌のほうが雄より多いこと、中隔にはβエストロゲン受容体が多いが、中心灰白質に神経投射する中隔中間部の神経細胞のうちβエストロゲン受容体を持つ神経細胞の割合は雌雄で変りがないことが示された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Tsukahara, S., Yamanouchi, K.: "Neurohistological and behavioral evidence for lordosis-inhibiting tract from lateral septum to periaqueductal gray In male rats"J. Comp. Neural. 431,3. 293-310 (2001)
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[Publications] Watanabe, M., Yamanouchi, K.: "Inhibitory effect of dorsal cut of hypothalamus on ovulation delayed by pentobarbital in female rats"J. Reprod. Develop.. 47,5. 253-258 (2001)
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[Publications] Yurino, H., Tsukahara, S., Koranyi L, Yamanouchi, k.: "Inhibitory effect of postpartum lesions or cuts in median raphe nucleus on maternal Behavior in female rats"Zool. Sci.. 18,9. 1225-1230 (2001)
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[Publications] 山内兄人: "脳と性行動"日本性科学会誌. 19. 3-11 (2001)
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[Publications] 山内兄人: "脳が司る母性-ラットの研究から"母性と父性の人間科学-コロナ社. 11-20 (2001)
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[Publications] Tsukahara, S., Yamanouchi, K: "Sex difference in septal neurons projecting axons to midbrain central gray in rats : A Combined double retrograde tracing and ER-immunohistocheinical study"Endocrinology. 143,1. 285-294 (2002)
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[Publications] 山内兄人, 新井康允(編著): "性を司る脳とホルモン"コロナ社. 216 (2001)