1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒドラの散在神経系における神経回路網形成の分子機構
Project/Area Number |
11640684
|
Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
小泉 修 福岡女子大学, 人間環境学部, 教授 (50094777)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美濃部 純子 福岡女子大学, 人間環境学部, 助手 (80190718)
|
Keywords | 散在神経系 / ヒドラ / 神経回路網形成 / 発生神経生物学 / ペプチド / 免疫組織化学 / 抗体作製 / 神経合化 |
Research Abstract |
(1)ヒドラの散在神経系における神経伝達物質としてのペプチドの役割:ヒドラのペプチド性シグナル分子の大規模スクリーニング(300種以上のペプチドの分離・200種以上のペプチドのアミノ酸配列決定)のプロジェクトの進行により、10種以上の興味ある活性を持つ神経ペプチドを同定した。それらの全てについて抗体作製を行った。その結果、ヒドラのペプチドは神経ペプチドと上皮細胞に局在する上皮ペプチドに大別できることが判明した。また、数種のペプチドについては前駆蛋白質の遺伝子構造まで明らかになり、in situ hybridizationも成功した。 (2)更に、現在、ヒドラペプチド共同プロジェクトの一環として、ヒドラから単離・構造決定・化学合成したペプチドについては、一つ残らず全て、抗体作製を行っている。その結果、5種の神経部分集合に特異的な抗体が得られた。これらは、ヒドラの神経部分集合を可視化するマーカーとして有用である。更に、このような抗体を得て、神経回路網形成研究のための基礎的なデータとしてのヒドラの神経網の化学解剖学(chemical anatomy)を行った。 (3)神経網の形成機構については、再生系・出芽系・再導入系・正常成熟系などの沢山の実験系を用いて、また、神経網形成異常の突然変異体を同定し、そのキメラも用いて、制御要因を細胞レベルで明らかにした。 (4)神経回路網形成の分子機構:ヒドラ・ペプチド・プロジェクトにより、ヒドラの神経細胞の分化を抑制するペプチドファミリー(PW family)と神経細胞の分化を促進するペプチドHym355(FPQSFLPRGamide)が同定された。また、抗体作製により、PW familyは上皮細胞に局在し、Hym355は神経細胞に局在する事が判明した。更に、ヤムシにおいてもHym355抗体が神経細胞を染色し、LPW抗体が上皮細胞を染色するという結果が得られたため、これらの分子がヒドラだけではなく他の神経系でも機能している可能性が考えられた。
|
-
[Publications] T.Takahashi: "Identification of a new member of the LWamide peptide family:Physiological activity and cellular localization in chidarian polyps"Biological Bulletin. In press. (2000)
-
[Publications] T.Takahashi: "A novel neuropeptide,Hym355,positively regulates neuron differentiation in hydra"Development. 127. 997-1005 (2000)
-
[Publications] T.Hatta: "Identification of a homology of actin-binding protein,ABP-280,localized at epithelial cell-cell boundaries in hydra"Zoological Science. 16. 439-443 (1999)
-
[Publications] M.Inoue: "Localization of the neuropeptide NGIWY amide in the holothurian nervous system and its effects on muscular contraction"Proc.R.Soc.Lond.B.. 266. 993-1000 (1999)
-
[Publications] 小泉 修: "ヒドラの散在神経系の神経生物学"比較生理生化学. 16. 278-287 (1999)