2000 Fiscal Year Annual Research Report
マメ科インゲンマメ連とヌスビトハギ連の生殖器官進化の解剖・発生学的解析
Project/Area Number |
11640689
|
Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
根本 智行 石巻専修大学, 理工学部, 助教授 (50228293)
|
Keywords | マメ科 / ヌスビトハギ連 / インゲンマメ連 / 花 / 果実 / 形態学 / 解剖学 / 分類学 |
Research Abstract |
マメ科植物の中で最も形態変異に富むグループの一つであるヌスビトハギ連の形態進化を探るため、近縁なインゲンマメ連を含めて、生殖器官である花と果実の形態学的および解剖学的研究を行った。 花の形態では、インゲンマメ連の中でヌスビトハギ連に最も近縁と推定されているKennediinae亜連のKennedia属とHardenbergia属の花の構造を調べた。その結果、両属とも雄ずいの内面基部に花内蜜腺をもち、雄ずい筒の基部は膨らみ蜜を溜める構造をもち、また、その向軸側は雄蕊筒が開いており訪花昆虫の吸蜜に適した構造となっていることが判明した。さらに、翼弁と龍骨弁の接着はわずかであり、また柱頭は小型で縁毛をもつことが分かった。これらの構造はヌスビトハギ連で見られる「単純型」と「破裂型」という2つの花部構造のうちの「単純型」と一致していることから、「単純型」が原始形質であると評価することができた。 果実については、ヌスビトハギ連およびインゲンマメ連の近縁群で得られた解剖学的形質を分子系統樹上にプロットした。その結果、分子系統樹ではヌスビトハギ亜連に2つの主要なクレードが認められているが、クレードによって果実の解剖学的形質の進化傾向が異なっていることが判明した。すなわち、一方のクレードで形質の多様化が著しく、多様な形質進化が起こっているのに対して、もう一方のクレードでは形質の多様性が低く、形質進化があまり起こらなかったと推察できる。また、これら2つのクレードは花部構造とよく一致しており、前者のクレードは派生的な「破裂型」の花部構造をもち、後者はより原始的な「単純型」の構造をもつ。したがって、花部構造からも果実の形質進化を推定することが可能となり、後者のクレードにみられる果実構造がより原始的である可能性が示唆された。
|