1999 Fiscal Year Annual Research Report
原始的貝形虫類プラチコーパの形態,生態,生物地理および系統分類学的考察
Project/Area Number |
11640693
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
塚越 哲 静岡大学, 理学部, 助教授 (90212050)
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Keywords | 貝形虫 / Ostraconda / Segmentation / living fossil / Bonthos |
Research Abstract |
本年度は主に「生きた化石」プラチコーパ貝形虫類の一種、Keijicyoidea sp.の標本数を多く集めること、集められた標本を利用して個体発生の追跡をすること、さらに軟体部比較解剖等を遂行することができた。本種の棲息場所についてはこれまで報告がなかったが、東大理学部油壷臨海実験所の表浜海岸岩礁地で干潮時にカジメを引き抜き、付着している短藻などとともに仮根周辺を洗い、得られた堆積物を検鏡したところ、これまでの経験上最も高い個体数密度で本種を採集することができた。厳密なマイクロハビタットを特定するまでには至らなかったが、カジメ群落のある潮下帯上部で生息していることは、確実となった。また、得られた標本を利用して、背甲の大きさの計測によって個体発生のシリーズを明らかにすることができた。本種(おそらく本属全体も)では、脱皮ステージA-6までを確認でき、おそらくA-7まで持つ(全部で8齢)可能性が示され、これは一般の底生貝形虫類と同等であることがわかった。さらにキチン質部の比較解剖においては、これまでプラチコーパ貝形虫類には、少なくとも成体では目(単眼/ノープリウス・アイ)は存在しないとされていたが、本種でははっきりと眼点を確認することができた。また、標本を凍結乾燥して腹部をSEM観察したところ、従来Furca(尾叉)とされていた器官が、最終体節より一つ前方の体節から派生していることがわかり、従来の"Furca"の定義に当てはまらないとともに、この器官は進化型貝形虫類ポドコーパの雄の交尾器と相同な関係にあることがわかった。
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