2000 Fiscal Year Annual Research Report
原始的貝形虫類プラチコーパの形態,生態,生物地理および系統分類学的考察
Project/Area Number |
11640693
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
塚越 哲 静岡大学, 理学部, 助教授 (90212050)
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Keywords | 貝形虫 / Ostracoda / segmentation / living fossil / Benthos / 個体発生 |
Research Abstract |
昨年度までの調査の結果、Platycopaの中で比較的浅い水深に生息することがわかったKeijcyoidea sp.のマイクロハビタットを明らかにするため、筑波大学下田臨海実験センターを拠点とし、夏季に鍋田湾において野外調査を行った。昨年度東大油壷臨海実験所で行ったのと同様、潮下帯の岩上に繁茂するアラメを仮根ごと採集して堆積物を洗い出したところ、これまで最高の個体数密度を記録した。生体を数多く採集することができたため、研究室に持ち帰り、アクリル板で製作した行動観察用の水槽(幅60mm×高さ40mm奥行き5mm)に生体標本を入れて行動観察を行った。その結果、移動には2対の触角と尾叉のみを使い、他の貝形虫類とは大きく異なっていることがわかった。また、堆積物表面に生体標本を移すと、即座に行動を開始して堆積物中に潜ることがわかり、Keijcyoidea sp.の生活場は海藻や堆積物の表面ではなく、粗粒砂の中であることがわかった。Keijcyoidea sp.の体制は、他のPlatycopaと基本的に変わらないため、他のPlatycopaの分類群も同様な生活様式をもつことが示唆された。また飼育の結果、個体発生について多くの知見が得られた。脱皮齢は一般の海生貝形虫類よりも1齢多い9齢あることが確認され、淡水性貝形虫類に多く見られる齢数と一致することがわかった。また、雌雄の交尾器は脱皮ステージA-3(第6齢)より原基として発現し、既にこの段階で性的二型がみられること、胴節、ニ叉型の第二触角など、この分類群のもつの特徴的な形質は、幼体初期から発現し、これは祖先的甲殻類がもつ形質を引き継いでいることが強く示唆された。さらにこの分類群について、詳しい生活史や生態的観察の必要性が生じた。
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