1999 Fiscal Year Annual Research Report
ナメクジウオの形態的・遺伝的多様性と種分化-日本個体群を中心に
Project/Area Number |
11640694
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西川 輝昭 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (50126885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 睦 東京大学, 海洋研究所, 教授 (90136896)
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Keywords | ナメクジウオ / 日本 / 飼育 / アロザイム分析 / ヘテロ接合体率 / タイ国 / ミトコンドリアDNA / 多型遺伝子座 |
Research Abstract |
本年度は、伊勢湾湾口部、瀬戸内海、および九州天草周辺から、いずれも多数のナメクジウオ標本を入手することが出来た。特に、後2者については生きたまま入手できたので、水槽飼育をこころみた。扱いやすさを考慮して底砂のかわりにガラスビーズを敷き、適宜餌を与えたところ、すでに半年以上生存している。ただし、飼育開始時には生殖期に入っていたが、その後生殖腺が急速に縮小したため、地域個体群間の交配実験はできなかった。 これら3個体群についてはすでにアロザイム分析による集団遺伝学的解析が終了している。その結果、以下のことが判明した。 (1)調べた17遺伝子座のうち、5遺伝子座は1つの対立遺伝子で固定されていた。 (2)残り12遺伝子座では複数の対立遺伝子がみられたが、多型遺伝子座は9であった。 (3)5遺伝子座において、各個体群間の対立遺伝子頻度に統計的有意差が認められたが、全遺伝子座をまとめた時のFst値が非常に小さいことから、個体群間にはかなりの遺伝的交流があることが推測された。 (4)Fis値は0よりも有意に大きかった。これは、個体群内のヘテロ接合体率の低下を意味するが、上記(3)などからみて有効な集団サイズの縮小によるものとは考えにくい。 ミトコンドリアDNAを用いた解析は現在進行中である。上記のアロザイム分析の結果とあわせて、まもなく論文としてまとめられる見込みである。 タイ国のバンコク湾とプーケットにおいて、1999年11月末から12月はじめまで、当初計画どおりの野外調査を行った。最大限の採集努力にもかかわらず、残念ながらナメクジウオは採集できなかった。そのかわり、Branchiostoma malayanum Webbという、日本には生息しない近縁種を多数採集することに成功した。データの比較により、日本のナメクジウオ個体群の集団遺伝学的特性が明かになることが期待される。
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