2000 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類精巣微細形態の種間比較によるヒトの精子競争仮説の検討
Project/Area Number |
11640712
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
榎本 知郎 東海大学, 医学部, 助教授 (80056316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長戸 康和 東海大学, 医学部, 助教授 (30056345)
松林 清明 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (50027497)
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Keywords | 精子競争 / 精子形成 / ゴリラ / チンパンジー / オランウータン / 精細管 / 精巣 / 先体 |
Research Abstract |
ヒトを含む霊長類における精子競争の様相を組織学的に探る試みとして、今年度は希少種で手に入りにくい類人猿の精巣標本の収集に精力を注ぎ、おもに形態学的な分析を行った。その結果、これまでのものを加え、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ヒトの標本が、それぞれ11、11、6、6となり、統計学的な分析が可能な数を集めることができた。組織の形態学的な所見は、ゴリラでは、(1)11個体中6個体で精子形成がみとめられないこと、(2)精子形成が認められる精巣でも、間質が非常に豊富であること、(3)いずれもテストステロン染色によく染まるライディヒ細胞が非常に多く認められる、などが明らかになった。チンパンジーでは、(1)精上皮が非常に厚く、各段階の精子形成細胞が多数あり、成熟期の精子細胞も豊富で、精子形成が非常に活発であること、(2)間質は疎でライディヒ細胞が少ないこと、またオランウータンでは、(1)精子形成は比較的活発であること、(2)間質もかなり豊富であること、(3)精子細胞の先体が大きいこと、などが明らかになった。この違いは、それぞれの種のオスが採用する繁殖戦略のちがいを反映しているものと思われる。来年度は、数量的にも解析を加え、精子競争との関連についてさらに分析を加えたい。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 榎本知郎,中野まゆみ,松林清明,長谷川有美: "ニホンザルの成長・加齢に伴う精子形成の変化-新しい精子形成の指標、精子形成指数(SI)による分析"霊長類研究. 16(3)(印刷中). (2000)
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[Publications] 中野まゆみ,榎本知郎,長戸康和,花本秀子,松林清明: "オランウータン、シアマン、アジルテナガザルの精巣微細構造の特徴"霊長類研究. 16(3)(印刷中). (2000)
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[Publications] 榎本知郎: "男性生殖器の発生"生体の科学. 51(6). 596-601 (2000)
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[Publications] 松林清明,榎本知郎,中野まゆみ,花本秀子: "ゴリラ精巣の組織学的研究"霊長類研究. 16(3)(印刷中). (2000)
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[Publications] Enomoto T,Goto S and Nakano M: "Conference Proceedings, 18th Congress of International Primatological Society (CD-ROM)"Spermatogenetic deficiency in hybrid males between Macaca hecki and M.tonkeana. (2001)
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[Publications] Matsubayashi K,Enomoto T and Nakano M: "Conference Proceedings, 18th Cogress of International Primatological Society (CD-ROM)"Reproductive strategies of great apes in a view of testicular histology. (2001)