1999 Fiscal Year Annual Research Report
スピン偏極したヘリウムイオンビームの生成及びそのビーム特性に関する基礎研究
Project/Area Number |
11650030
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小林 中 大阪市立大学, 工学部, 講師 (30271373)
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Keywords | 電界イオン化 / スピン偏極イオン / 運動エネルギー分布 / 非占有状態密度 / ヘリウムイオン / 強磁性体 / 表面 |
Research Abstract |
本研究の目標は、電界イオン化過程を利用して生成したイオンビームの特性を評価し、スピン偏極イオンビームを効率良く生成する技術を確立することにある。 そこで本年度は、昨年度の科研費を基に着手したイオン源装置の設計・製作を引き続いて行い、装置の調整を兼ねて実際にArガスを用いて電界イオン化の確認を行った。さらに、生成したArイオンビームの運動エネルギー分布測定を行うため、イオン速度の選別器であるWienフィルターを用いた測定も試みた。 設計・製作した装置に本年度準備したイオンポンプ(Varian社製)を取り付けることにより、到達真空度を6×10^<-8>Torrまで向上させることが出来た。これにより、真空装置内に残留する水素原子が積極的に取り除かれ、清浄かつ規定された探針表面からの電界イオン化が実現され、均質かつ質的に高いビームを創り出す環境が整えられたことになる。 次に、探針試料金属としてタングステン、結像ガスとしてアルゴンの組み合わせを用いてイオン化の確認実験を行った。実際にFIM像を観測することが出来たことから、製作したイオン源装置によりAr原子の電界イオン化を十分に起こせることが確認出来た。一方、イオンの運動エネルギー分布測定に関しては、準備したシリコン検出器用のバイアス電源(ORTEC社製)では、その最大出力電圧5kVの場合でも臨界電圧条件を十分に満足させることができず、現時点では十分なイオン数の検出に至っていない。この問題は、より高電圧・低ノイズな電源を使用することにより解決出来る筈であり、イオン源装置の設計・製作という所期の目標は十分に達成されたものと考えられる。 また、実験的に得られる運動エネルギー分布スペクトルを予測し、理論的解釈との対応をつけるため、量子化学計算の一つであるDV-Xα法にも取り組んだ。計算では、クラスター模型を採用し、タングステン、ニッケルの固体内部および表面の占有・非占有状態密度を求めた。来年度は、実際にヘリウムを用いて測定したスペクトルとの比較を行い、スペクトルピークの同定とその背後にあるイオン化過程の微視的機構の解明へと結び付けて行きたい。
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