2000 Fiscal Year Annual Research Report
DLC薄膜強度評価のためのクラスタ構造体の原子間相互作用に関する検討
Project/Area Number |
11650092
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渋谷 陽二 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70206150)
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Keywords | DLC薄膜 / 強結合近似分子動力学法 / 第一原理計算手法 / オーダーN / 局所環境依存性 |
Research Abstract |
ダイヤモンド・ライク・カーボン(以降DLCと称する)の基本的な構造は,sp^2のグラファイト構造,sp^3のダイヤモンド構造,アモルファス・カーボン,そして炭化水素系のポリマーといった混成構造体であり,製膜条件によって変化する構成様式の把握が特性評価上重要な点の一つと考えられている.本研究は,部分的に結晶あるいはそれに近い構造を持つクラスタと,同種あるいは異なった構造により構成されるクラスタ間の相互作用を記述する手法を確立し,DLCの強度発現機構の解明を目的に行われた.本年度では,前年度に開発終了したクラスタ間界面に相当する領域のより厳密な相互作用のモデル化を可能とする,強結合近似分子動力学法(Tight binding MD;TB-MD)を用いて,DLC膜のクラスタモデルによる強度評価のための解析を行った.前年度に解析されたネットワークモデルの結果から,強度低下を導く結合形態の組み合わせの同定を行い,変形に大きく寄与するねじり基本変形様式を指摘した.また,初期構造においても,実験結果と良好な一致を示すsp^3比を得ることができた.TB-MDは実空間でも解析できる第一原理計算手法であり,非周期構造の問題を直接的に解析することが可能である.しかしながら,そのために大規模シミュレーションが必要不可欠になり,オーダーN(O(N))の手法を導入した.第一原理計算手法では実行できない大規模シミュレーションを行い,局所環境依存性を考慮した原子間相互作用がクラスタ構造体のような不均質な構造体には必要不可欠であることを明らかにした.
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[Publications] 釘宮哲也,渋谷陽二: "ダイヤモンドライクカーボンの変形機構(第1報,単軸引張り変形下における結合形態の変化)"日本機械学会論文集(A編). 66・649. 1794-1799 (2000)
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[Publications] 釘宮哲也,渋谷陽二: "ダイヤモンドライクカーボンの変形機構(第2報,Order (N) Tight-binding分子動力学法の適用)"日本機械学会論文集(A編)掲載予定. (2001)
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[Publications] 渋谷陽二: "カーボンナノチューブの曲げによる屈服座屈挙動"材料 掲載予定. 50・4. (2001)
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[Publications] 渋谷陽二,丹野誠: "物質境界条件を用いた連続体場の方程式と材料表面効果の評価"第44回日本学術会議材料研究連合講演会講演論文集. 337-338 (2000)
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[Publications] 釘宮哲也,中村哲,渋谷陽二: "O (N) 法によるTight-binding分子動力学計算の高速化"日本機械学会2000年度年次大会講演論文集(II). 00・1. 41-42 (2000)
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[Publications] 釘宮哲也,渋谷陽二: "Tight-binding分子動力学法によるアモルファスカーボンの力学的特性の評価"日本金属学会春期大会講演概要. 168 (2000)