液晶ディスプレイ製造の高率化を目指した液晶薄膜流動解析システムの開発

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11650195
• Research Institution: Kochi University of Technology
• Principal Investigator: 蝶野 成臣 高知工科大学, 工学部, 教授 (20155328)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 辻 知宏 高知工科大学, 工学部, 助手 (60309721)
• Keywords: 液晶 / 液晶ディスプレイ / 液晶注入 / 流体工学 / Hele-Shaw流れ / 数値解析 / ソフトウェア開発

Research Abstract

本研究の目的は,液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)製造の一工程である液晶注入プロセスを,数値的に解析できる汎用性の高いソフトウェアの開発である.このソフトウェアが完成すれば,任意の大きさおよび形状のLCDに対して注入時間の大幅な短縮が実現できるので,LCDの生産性は飛躍的に向上し,それがそのままコストダウンに繋がる.
まず,Leslie-Ericksen理論を構成方程式として選択し,運動方程式と構成方程式にHele-Shaw近似を施して定式化を行った.微分方程式の離散化には有限差分法を用い,従来開発したサブルーチンプログラムを巧みに組み合わせることで,ソフトウェアの効率的開発を図った.一方,液晶は分子の配向状態に依存して3種類の粘性係数を有する.そこで外場により分子を所定の方向に配向させた状態で,二重円筒型粘度計で液晶粘度の精密測定を行った.さらに液晶の表面張力を測定し,圧力差による自由表面位置の進行速度を補正できるようにプログラムを改良した.次に注入実験を行い,注入完了時間のみならず自由表面位置の時間変化をビデオ撮影した.
開発されたソフトウェアを用いて,いくつかの代表的な条件で数値計算を実施した結果,液晶のスムーズな流動・注入をシミュレートすることができ,注入口の幅,セルギャップ,加圧注入における圧力などの影響を明らかにした.また注入口の幅が同一であれば,注入口が辺の中央に1個設けられているよりも,小さい注入口が2個設けられている方が注入時間は短縮されることを示した.一方で実験結果と定量的な一致を得るには至らなかった.これは実験時にセルギャップが変化したためと考えられる.今後は,セル内の圧力データからガラス板のたわみを計算し,セルギャップの局所的・時間的変化を考慮したソフトウェアを開発する必要がある.

Research Products

• [Publications] 蝶野成臣,辻知宏: "高分子液晶のレオロジーの数値解析(第2報,せん断・伸長流特性)"日本機械学会論文集(B). 65. 3539-3545 (1999)
• [Publications] 蝶野成臣,辻知宏: "ネマチック液晶の流動と欠陥の計算機シミュレーション"日本液晶学会誌. 3. 107-116 (1999)
• [Publications] 辻知宏,蝶野成臣: "ネマティック液晶の欠陥構造と流動の影響"日本機械学会誌. 102. 437-437 (1999)
• [Publications] S.Chono and T.Tsuji: "On the capability of tensor type order parameters for nematic fluids"Proceedings of the XIII International Congress on Rheology. 2. 82-84 (2000)
• [Publications] 小笠原光一,辻知宏,蝶野成臣: "ネマティック液晶における磁場による流動の誘起"日本機械学会第78期流体工学部門講演会CD-ROM版講演論文集. OS9. 917 (2000)
• [Publications] 小笠原光一,辻知宏,蝶野成臣: "ネマティック液晶における磁場による流動の誘起(ティルト角の影響)"日本機械学会中国四国支部第39期総会・講演会講演論文集. 015-1. 259-260 (2001)