Research Abstract |
高温予混合ディーゼル機関用に提案された傘状噴霧ノズルを用いて,燃焼実験を行うための試験用エンジンの変更を行った.傘状噴霧ノズルとは通常のピントルタイプのノズル心弁先端にチップを取り付けたものであり,広角度で円周方向に微細な液滴を噴霧できる特徴がある.ノズルは本体の長さを変更した3種類と傘状チップに溝を設けたものの合計4種類を用意した.燃焼実験に先立ち,燃焼実験を行う条件と同条件にて,燃料噴射率を計測した.噴射率パターンから,多段噴射などの異常な噴霧ではないことを確認された条件として,エンジン回転数2000rpm,開弁圧27.5MPa,燃料流量14.1mg/cycleおよび24.1mg/cycleでの燃焼実験を計画した.これらの条件にて,圧力容器内での噴霧パターンの高速度ビデオによる可視化を行った.周囲空気の圧力を変化させることで,噴霧の形状を調べ,燃焼室内での噴霧形状の予測を行った.燃焼実験では,出力,正味平均有効圧力,機械効率,筒内最高圧力,燃料消費率,NOx,すす,一酸化炭素,指圧線図等を計測した.燃焼実験では,噴霧条件を一条件とし,燃料噴射時期を圧縮上死点から圧縮上死点前90度まで変化させて実験を行った.この実験から,燃焼は通常拡散燃焼領域,ノッキングの激しい運転領域,予混合燃焼領域が存在することが分かった.特に,上死点前65度から70度にて燃料を噴霧した場合,予混合燃焼運転が可能であり,この時,ディーゼル機関でもつとも問題となるNOxとすすのトレードオフの関係はなくなり,両者とも排出量はほぼ0になることが示された.しかし,エンジンの性能に関係する,正味平均有効圧力と正味燃料消費率は最高の値を示した燃料噴射時期と比較して悪化しておりノズルおよび燃焼室形状のさらなる最適化が必要なことが明らかになった.
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