Research Abstract |
ディーゼル機関は効率がよくエネルギーの有効利用とCO_2ガス排出の抑制の面からは高く評価されている.一方,排出ガス中のNOxとすすのトレードオフの問題は深刻であり,解決策を模索中である.その有力な候補として提案されている傘状噴霧燃焼システムは着火前に全燃料を噴射し,圧縮により高温となった空気により燃料を蒸発,拡散,混合させて予混合燃焼を行うものである.現在まで,低負荷領域ではよい結果が得られているが,実用化のためにはさらに高負荷領域の改善が要求されている. 本研究では,まず,レーザシートと高速度ビデを用いた可視化実験とKIVA-3Vモデルを用いた数値シミュレーションを行い,傘状噴霧のパターンを求めて数値モデルを検証した.また,位相ドップラ流速計を用いて噴霧の粒径,流速を求めた.さらに,噴霧特性と機関出力,排出ガス性状についてもシミュレーションを計画した. 次に,直接噴射式ディーゼル機関に傘状噴霧を用いた燃焼実験を行い,エンジン特性と排出ガス特性を評価した.燃焼実験は機関回転数1250〜2000rpm,空気過剰率2.1〜6.9,噴射時期150°BTDC〜2°ATDCの範囲で実験を行い,以下の結果を得た. (1)傘状噴霧の形状は、雰囲気圧力の影響を受けやすく,高い雰囲気圧力において噴霧は小さくまとまる.数値計算でも可視化と同様な形状が得られた.また,噴霧のPDA測定で,SMDの値が十分小さいことが分かり,壁面付着は少ないが,拡散が不十分であることが予想された. (2)燃焼実験からNOxとすすを同時に低減できる領域が確認でき,λ=3.1では,燃料噴射時期65°BTDC以前で,λ=2.5では75°BTDC以前のときにNOxとすすがほぼゼロとなる.また,機関回転数を変化させてもほぼ同じλの運転領域を持ち,高い機関回転数が,NOxとすすの抑制に有効である. (3)今後の継続実験で燃焼室、空気流動、そして噴霧特性の最適化を行い,排出物特性を維持しつつ,燃料消費率の改善について検討する必要がある.
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