1999 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺癌の冷凍手術に関する研究 -細胞の変形限界について-
Project/Area Number |
11650227
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高松 洋 九州大学, 機能物質科学研究所, 助教授 (20179550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住本 英樹 九州大学, 医学系研究科, 教授 (30179303)
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Keywords | 圧迫変形 / 機械的ストレス / 生存率 / 凍結障害 / 冷凍手術 / 細胞 / 前立腺癌 |
Research Abstract |
現在、日本ではほとんど実施されていない臓器の冷凍手術を普及させるには、手術のプロトコルの確立および手術法やモニター技術の改善による組織の凍結破壊の確実性と精度の向上が重要である。その技術を支えるのは科学的基礎としての細胞の凍結障害のメカニズムの解明である。これについて、従来から緩速凍結時の場合には細胞外凍結に起因する化学的効果が細胞損傷の主要因であると考えられてきたが、最近、氷晶による細胞の圧迫も凍結障害の一因である可能性が高いことが明らかになってきた。本研究は、この影響、すなわち圧迫変形が細胞の損傷に及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目的としている。 実験はヒト由来の前立腺癌細胞株PC-3の生理食塩水懸濁液を試料として行った。平行な二平面で挟まれた細胞の生存率と変形度の関係を明らかにするため、直径の予め判っているガラスビーズをスペーサとして用いる「サンドイッチ法」を考案し、0℃、23℃、37℃での実験を行った。生存率と隙間すなわち変形度との関係についての実験結果は0℃と23℃でほぼ同じであった。隙間11.4μmでは80%以上が生き残ったが、5.9μmでは40〜50%の細胞が損傷を受け、5.9μmになると約90%が破壊された。この結果によると、細胞は元の直径の約30%まで変形すると約半数が損傷することになる。また、計算によるとこの場合の細胞表面積の増加は約50%になる。一方、37℃では生存率は0℃および23℃の場合より低く、その程度は隙間が狭くなるほど大きくなった。細胞膜の脂質の相転移温度が10〜20℃であることを考慮すると、以上の結果より、細胞の損傷は細胞膜の性質で決定されるのではなく、細胞骨格の変形が主な原因ではないかと考えられる。
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