Research Abstract |
脳波は,大脳皮質における神経細胞のシナプス後電位の総和を頭皮上から記録したものであり,背景脳波は,脳波の中でも基本となる持続的な波である.スパイクは,てんかん患者の背景脳波に埋もれて出現する突発性異常脳波である. 本研究では,スパイクが発生したときの背景脳波の変動特性を解析するために,記録データ(生データ)からスパイク波形を高精度に除去することを目的とした.そのためにはスパイク波形を高精度に検出し,抽出する必要がある.しかし,スパイクは,振幅のみならず,波形幅(持続)までもが変動するために,雑音が混在した波形からスパイク波形を検出し,抽出することは容易ではない.そこで,本研究では,最初に,スパイクを構成している棘波と徐波を分離するために設計したモルフォロジィフィルタを用いて生データを処理した.次に,持続と振幅が共に変動する波形と標準波形との間の波形形状の近さを表わす指標として相似係数を提案し,相似係数を用いてスパイク波形を正確に検出して抽出する方法を提案した.さらに,相似係数を用いて,雑音に埋もれたスパイク波形の持続と振幅を推定する方法を提案した.これらの提案法の妥当性を示すために,シミュレーションデータに適用した結果,高精度な波形の抽出が可能となり,真値に近い持続と振幅の推定値を得ることができた.さらに,実データのスパイクに適用した結果,スパイクと背景脳波が混在したデータからスパイク波形を高精度に抽出することができ,生データからスパイク波形を高精度に除去することができた. 本年度の研究成果は,学会で発表し,現在,医用電子と生体工学の論文誌に投稿中である.また,今年度の研究を進める上で基本となった,スパイクと背景脳波の信号分離法に関する研究が論文誌に掲載されたので,本報告書の研究発表の項目に記載した.
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