Research Abstract |
阪神・淡路大震災を契機として,ライフラインの構造安全性ばかりではなく,震中,震後の機能性能,震後の修復性の重要性が再認識された。また,要求される安全性のレベルや機能性能は必ずしも一律ではなく,目的,用途の重要性,緊急性に応じて選択可能なものであることも認識された。このような背景から本研究では,ライフラインが有するべき地震後性能について,目的,用途の重要性,緊急性を考慮に入れて検討を行うとともに,構造破壊と機能性能との関係をライフラインのネットワーク形状を考慮しながら整理することにより,ライフラインに対する性能規定型設計法の導入の可能性について議論した。 まず,米国の道路橋に適用されている性能規定型設計法に関する資料を収集,分析し,システムとしてのライフラインに適応する場合の課題を整理した。つぎに,ライフライン事業体,市民,行政担当者,病院関係者などにおける,地震後最低限必要である上水道の性能について検討した。本年度は水道事業体と病院に対してアンケート調査を実施し,得られたデーターを解析することにより,震後性能の具体像を明らかにしようとした。その結果,水道事業体においては,応急給水は主として災害対策本部によって行われるので,上水道の本来の機能としては認知していないことや,医療用水としては水量だけではなく,水質の確保も重要であることなどが明らかとなった。さらに,想定される地震被害を受けた後の上水道流量解析を行い,各供給点で取り出すことのできる水圧,水量を求め,構造被害とこれらの性能との関係について考慮した。とくに,病院,避難所などの防災拠点など,震後に重要度が増す供給点の取り扱い方について考察を深めた。
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