Research Abstract |
1.実験概要 本研究では,水平力に対して圧縮側となる側柱に引張軸力を受ける耐震壁のせん断終局強度性状を明らかにすることを目的として,実大の約1/4の鉄筋コンクリート耐震壁模型供試体を製作し,水平力に対して圧縮側となる側柱に引張軸力を作用させた水平加力実験を行った。供試体は,壁補強筋比,側柱主筋比,側柱補強筋比の3つを変化させた6体とし,実験時の各試験体の引張軸力を水平力が最大となるときに側柱主筋のひずみ度が引張降伏ひずみ度の80%程度となるような大きさとした。実験で計測した,水平荷重,水平変形,軸力,柱頂部の鉛直変位,壁の曲率,および鉄筋のひずみ度などから,せん断耐力に関する検討を行った。 2.成果の要約 (1)ひび割れ状況は,壁補強筋比,側柱主節比,側柱補強筋比による差異がみられず,全試験体とも側柱の柱頭と柱脚に斜めひび割れが発生すると同時に壁板の斜めひび割れが大きく開口してせん断破壊した。(2)水平方向の荷重-変形曲線は,最大耐力後に荷重が急激に低下するせん断破壊型の曲線となり,最大耐力時までの曲線には壁補強筋比,側柱主筋比,側柱補強筋比による大差はみられなかった。(3)今回設定した壁補強筋比,側柱主筋比,側柱補強筋比の範囲では最大耐力に大きな差異がみられず,既往の圧縮軸力を考慮したせん断強度式の軸方の項に引張軸力を考慮して求められる計算値が実験結果とほぼ対応した。このことから,このせん断強度式は引張軸力を受ける場合にも適用可能であるといえる。(4)軸力を無視している建築学会指針式による計算値は,最大耐力実験値に対して16%程度安全側の値となった。(5)与えた引張軸力の大きさの影響と考えられるが,今回得られた最大耐力実験値は既往のせん断強度式による値に近似している。加力方法が単調知力であり実験資科も少ないことから,今後,壁高や壁長を変えた場合を含めて,さらに検討を進めたい。
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