Research Abstract |
被験者には,健常な男子高齢者8名(平均年齢69歳)と,男子学生8名(平均23歳)を用いた.実験は脱衣室・浴室の室温を10℃,15℃,20℃,25℃とする4条件で行なわれた.また,常に前室23℃,湯温は40℃とした.測定項目は,生理反応として7点の皮膚温,血圧,心拍数,心電図,心理反応として温冷感,不快感,許容度を測定した.被験者は標準服に着替え,各種センサーを装着した後,前室へ入室した.前室に椅座位で30分以上安静した後,脱衣室に移動し,標準服を脱衣し5分間椅座位で滞在してもらった.次に浴槽に8分間全身浴で浸り,身体をタオルで十分拭いてから,再び脱衣室に椅座位で10分間滞在してもらった.入浴前後の脱衣室において,若年者の場合,室温や湯温による温冷感の違いが大きく認められたのに対し,高齢者の場合,室温10℃や15℃において若年者ほど寒さを申告しておらず,逆に入浴中には若年者ほど暑さを申告していなかった.高齢者は感受性の遅延や低下がみられ,室温10℃や15℃に対しては寒さを,40℃入浴時には暑さを訴えなかったのであろう.一連の入浴行動に伴う変動幅が「前室時の値±10mmHg」の範囲内である場合の室温は,許容温度範囲とみなした.収縮期血圧の変動についてみた場合,その範囲内にあるのは若年者では室温20℃と25℃であり,高齢者では室温25℃のみであった.これにより,若年者の場合では室温20℃以上,高齢者では室温25℃以上が許容温度範囲であろうと推察された.高齢者が居住する住宅において、冬季に住宅温熱環境を測定し、同時に高齢者の血圧、皮膚温等を測定し、入浴時に暖房を入れた場合と、暖房を使用しなかった場合を比較検討した。暖房の有無が、高齢者の生理的負担を大きく変えることが確認された.
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