1999 Fiscal Year Annual Research Report
アセアン諸固における民活型低所得世帯向け住宅開発政策の経験とその政策的含意
Project/Area Number |
11650643
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
福島 茂 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (10251349)
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Keywords | アセアン / 民間活力導入 / 低コスト住宅政策 / 市場ベースエネーブリング戦略 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マレーシア、フィリピン、インドネシアのアセアン3カ国で導入された民間活力導入型の低コスト住宅供給政策経験を比較分析し、当該政策の成立要因、構造的限界、政策課題などの政策的含意を導くことにある。今年度は、これら3カ国のうち、先駆けて当該政策を導入し、他国の政策モデルとなったマレーシアの民活型低コスト住宅政策の過去15年間にわたる政策経験を分析し、その政策的含意を導いた。 マレーシアにおける低コスト住宅の民間供給量は当該政策のもと、19,170戸(1981-85)、88,870戸(1986-90)、214,889戸(1991-95)と大幅に増加してきた。民活型低コスト住宅政策の成立とその維持の基盤となったのが、当該政策の政治的関心の高さである。民活型低コスト住宅政策の「内部補助」方式が新経済政策に沿ったものであるため、常にその政策目標の達成には政治的な関心が払われ、しかも低コスト住宅の配分における政治家推薦枠の存在が民間部門の低コスト住宅の供給を強く促した。第二は、連邦政府や州政府が低コスト住宅の開発義務付けだけでなく、民間デベロッパーの事業環境の整備やインセンティブ供与、開発義務確認・順守制度、住宅ローンの拡充などの需要者支援を一つの政策パッケージとして導入したことである。第三の成立要因は事業フィージビリティに関するものである。1988年から10年間続いた好景気に支えられ、民間デベロッパーは低コスト住宅以外の不動産開発の収益で低コスト住宅開発への内部補助分を十分に賄うことができたことで低コスト住宅の供給を拡大させることができた。一方、民活型低コスト住宅政策においては、(1)経済不況への脆弱性、(2)住宅市場の歪みの拡大、(3)貧困層の取得能力の眼界と民間デベロッパーの開発投資意欲との乖離などの構造的限界も明らかになった。
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Research Products
(2 results)