2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11650674
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
枝川 圭一 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (20223654)
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Keywords | 準結晶 / 転位 / 機械的性質 / 塑性 / フェイゾン / 正20面体相 / 正10角形相 |
Research Abstract |
準結晶は1984年にその存在が確認された新しいタイプの秩序構造物質であり、その構造は準周期的並進秩序によって特徴づけられる。この特徴のために準結晶構造が一般に4次元以上の高次元空間の結晶格子をその部分空間である3次元空間に射影することによって記述できることが数学的に示される。このことを用いてバーガース・ベクトルが高次元格子の格子並進ベクトルであるような転位を準結晶中に定義することができ、実際にこのような転位が種々の準結晶中に見出されている。このような転位は、実空間の格子変位による通常の歪に加えて実空間に直交する補空間方向の格子変位による歪(フェイゾン歪)を伴う点で準結晶に固有な全く新しいタイプの構造欠陥である。本年度は昨年度に引き続きAl-Pd-Mn系正20面体準結晶およびAl-Ni-Co系正10角形準結晶の塑性変形実験を行った。Al-Pd-Mn系においては降伏後に準結晶に特徴的な加工軟化が起こったのち歪量数10%から加工硬化が起こることを明らかにした。また、熱活性化解析の結果、温度に依存する転位のdragging応力を仮定することにより種々の温度でのデータが統一的に解釈できることを示した。また本年度は準結晶中転位に特有なフェイゾン歪に関する基礎的な研究も行った。フェイゾンが原子レベルで動く様子を高温高分解能電子顕微鏡その場観察法により世界で初めて直接観察することに成功した。またフェイゾンの導入によると思われる比熱の異常な上昇を見出した。この上昇分からフェイゾンによるエントロピーの増分を見積もり従来計算機シミュレーションで示されていた値と大体一致することを示した。
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[Publications] K.Edagawa et al.: "Plasticity of Al-Ni-Co decagonal single quasicrystals"Mater.Sci.and Eng.A. 294-296. 748-752 (2000)
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[Publications] K.Edagawa and K.Kajiyama: "High temperature specific heat of Al-Pd-Mn and Al-Cu-Co quasicrystals"Mater.Sci.and Eng.A. 294-296. 646-649 (2000)
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[Publications] K.Edagawa,K.Suzuki and S.Takeuchi: "High Resolution Transmission Electron Microscopy observation of thermally fluctuating phasons in decagonal Al-Cu-Co"Phys.Rev.Lett.. 85. 1674-1677 (2000)
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[Publications] 枝川圭一: "準結晶の力学物性"まてりあ. 39. 658-663 (2000)