Research Abstract |
6061ベース合金および0.5%Fe,0.5%Si,0.6%Mgを単独で過剰に含む合金,さらに,0.5%Feと0.5%Siをともに過剰に含む合金,および0.5%Feと0.6%Mgをともに過剰に含む合金,計6種類の6061合金のT6処理材について,時効析出に対するこれら過剰添加元素の影響を調べた.手法としては,比熱測定,電気比抵抗測定を主とした. 溶体化処理を施した試料について,比熱対温度曲線の測定および電気比抵抗対温度曲線の測定を行った結果,いずれの合金においても,室温〜350K付近に一つの発熱反応,450〜550K付近に二つの発熱反応,750〜800K付近に一つの吸熱反応が現れた.電気比抵抗曲線では,室温〜350K付近に二つの山が現れ,比熱曲線と考え合わせると,G.P.I,G.R.IIゾーンの形成に対応すると思われる.比抵抗曲線においても450〜550,750〜800Kにそれぞれ谷と山が見られ,これらは,β",β'の析出およびβの再固溶に対応することが判った.ただし,Mg過剰合金およびFe過剰合金では,β",β'よりも高温で形成される析出物の存在が示唆された.H11年度の研究結果を考え合わせると,分散相の形成に対応するとも考えられるが,やや析出温度が低い.引張強度および伸びについても別途調べた結果,種々の元素を過剰に添加したにも関わらず,上記組成範囲の過剰添加合金においては,引張り強度および伸びともに,JIS規格を満足することが判った.すなわち,Mg-Si系以外の析出物が形成される可能性はあるものの,6000系合金において硬化に寄与するβ",β'などの析出については,過剰添加元素の影響はないと言える. 析出相に不純物添加の影響が無く,分散相および晶出相にFeが含まれることから,アルミニウム合金のリサイクルの際に混入するFeは,分散相,晶出相に取り込まれて低減し,機械的特性を劣化させなかったと考えられる.これを実際に成分調整として行うためには,析出硬化に寄与するSi量をSi^*で表し,Si^*=Si-2/3(Fe-0.03)(at%)を目安にしてSi量を決めることが必要であり,それにより,強度を損なうことなく6000系合金のリサイクルを行うことができると結論された.
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