2000 Fiscal Year Annual Research Report
転位のメゾスコピック・シミュレーションと転位組織観察
Project/Area Number |
11650687
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小泉 大一 明治大学, 理工学部, 教授 (60126050)
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Keywords | 転位 / メゾスコピック / シミュレーション / 転位セグメント / 弾性相互作用 / 放射損失 / 格子振動 / パイエルスポテンシャル |
Research Abstract |
固体中の転位は長距離相互作用をする線状欠陥である。多数の転位の運動が固体の塑性を決定するので、転位の運動を理解することは固体の強度を議論する上で重要である。しかし、転位が湾曲し形を変えることと相互作用が長距離であることが問題を難しくしている。転位を多数の直線セグメントに分解し、セグメントとセグメントの交点(ノード)の座標を使って、セグメント間の弾性相互作用をすべて取り入れた形で運動方程式を記述した。慣性項には、線模型と同じ思想で転位が単位長さあたりの質量を持つことを仮定し、また、速度に比例する摩擦力も働くとした。運動方程式を積分するプログラムを作り、転位ループの一部が交差すべりをしてFrank-Read源となり、転位が増殖する過程のシミュレーションを行った。 上の議論では、転位に働く摩擦力として、速度に比例する摩擦力を考えた。しかし、現実の結晶の中では、転位はPeierlsポテンシャルを感じながら運動する。従って、転位は原子間距離の程度で加速減速を繰り返し、格子振動を励起する。このことは上の議論に2つの点で関わってくる。1つは弾性相互作用として、転位が放射する格子振動をまともに入れる必要があることであり、第2は転位が格子振動を放出して運動エネルギーを失う過程を式の中に入れる必要があることである。前者は極低温での転位の運動を考えない限りあまり問題にならないと思われる。後者の問題を考えるために、格子内の転位の運動に伴う格子振動の放射についてのシミュレーションも行った。その結果、転位がPeierlsポテンシャルを感じながら運動する場合には、加速減速によるエネルギー損失が無視できないこと、エネルギー損失は速度に比例する形に簡単には書けないことなどが示された。
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