1999 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物の巨大熱起電力とホッピング伝導を利用した熱電変換材料の開発
Project/Area Number |
11650716
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
井口 栄資 横浜国立大学, 工学部, 教授 (60017960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中津川 博 横浜国立大学, 工学部, 助手 (40303086)
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Keywords | 熱電変換材料 / ゼーベック効果 / 熱電変換素子 / 性能指数 / 電力因子 / 強相関電子系 / ポーラロン / ホッピング |
Research Abstract |
熱電変換材料は固体の熱起電力(ゼーベック効果)を利用して熱を電気に変換する材料であり、P型・N型の熱電変換材料による熱電対が熱電変換素子である。その機能を表すパラメーターは性能指数Z=S^2/ρκで与えられる。ここで、Sは熱起電力、ρは抵抗率、κは熱伝導率である。特に、熱電変換素子から取り出せる電力は電力因子S^2/ρで決定される。即ち、熱起電力が大きく、抵抗率が小さければ熱電変換材料として優れている。酸化物・熱電変換材料の最有力候補として現在注目を集めているNaCo_2O_4は確かに従来の熱電変換材料に引けを取らない程に優れている。しかし、この酸化物はaging(時効)効果を起こし不安定である為、これに替わる安定で且つ高い電力因子を有する材料の開発が切望されている。 バンド伝導を示す大部分の物質にとっては電力因子は互いに矛盾した因子を含む。即ち、伝導電子或いは正孔濃度を上げ抵抗率を低下させると熱起電力も低下するので、その相乗効果で電力因子は決して上昇はしない。しかし、これまでの我々の研究が確認したように、強相関電子系酸化物は電子又は正孔がポーラロンを形成し、そのホッピングが伝導を支配しているので、電子又は正孔濃度の増加が単純に抵抗率と熱起電力の低下には直結しない。 我々の研究結果はCo系遷移金属酸化物であるLa_<0.9>(Sr_<0.9>Ca_<0.1>)_<1.1>CoO_4が高温に於いて熱電変換材料の候補として有望である可能性を示す事に成功した。この物質は環境に影響を及ぼす様な有毒物質を発生する心配が無いので実用化という観点から有望な新物質である。同時に、その実用化の為には熱電変換素子化が不可欠である。しかし、遷移金属酸化物の中で、N型の熱電変換材料として有力な候補は依然不在のままである。今回、熱起電力がP/N反転する遷移金属酸化物LaCo_<1-x>Ti_xO_3(0.05≦x≦0.15)に着目し、その電子構造を計算した。但し、この物質は高電力因子を有さない。従って、N型熱電変換材料の探索が今後の課題である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 中津川 博: "La_<0.9>(Sr_<1-x>Ca_x)_<1.1>CoO_4の熱電変換材料への応用"日本金属学会誌. 63(11). 1393-1399 (1999)
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[Publications] Hiroshi Nakatsugawa: "Study of Electronic Structures in LaCo_<1-x>Ti_xO_3 (x=0, 0.05 and 0.15) Using Discrete-Variational-X α Cluster Method"Japanese Journal of Applied Physics. 39(3A)(in press). (2000)