2000 Fiscal Year Annual Research Report
高濃度窒素含有耐熱鋼の高温力学特性を支配する因子Ωと強化機構に関する研究
Project/Area Number |
11650717
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Research Institution | YOKOHAMA NATIONAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
遠藤 孝雄 横浜国立大学, 工学部, 教授 (40018007)
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Keywords | ステンレス鋼 / 高温 / クリープ / 応力緩和 / クリープ寿命 / 固溶強化 / 析出強化 / 窒素 |
Research Abstract |
窒素は延性を損なうことなく耐熱鋼の機械的性質を向上させるので,窒素は先進耐熱鋼の開発において残された最後の添加元素と云われている.本研究では25Cr-20Niステンレス鋼に0.2mass%のNと0.45mass%のNbを複合添加した25Cr-20NiNbN鋼とこれらを含まないSUS310Sを対象にして,これらの複合添加が高温の機械的性質および変形機構に及ぼす影響を明らかにした.以降では,25Cr-20NiNbN鋼をA鋼,SUS310SをB鋼と呼ぶ. B鋼の基本組成はA鋼のそれと殆ど同じであるが,複合添加でA鋼の歪速度加速因子Ωは増加し,クリープ破断歪は減少するが,B鋼のクリープ寿命はA鋼のほぼ100倍であった.本研究では両鋼の仮想的歪速度を表す構成方程式を決定した. B鋼の転位運動は自由飛行的であるが,A鋼の転位運動は粘性的であることを瞬間塑性歪の有無,応力緩和曲線の解析,転位の分布形態,計算機シミュレーション,などで明らかにした.これは固溶質素とクロム原子が化学的相互作用でクラスターを形成し,これが高温固溶体強化に寄与していることを示している.応力緩和曲線の解析から求めた有効応力成分は全変形応力の約16%であり,応力変化後の歪速度の解析から定めた敷居応力は190MPaであった.転位と析出物との相互作用は引力型であることを示す組織写真が得られた.析出物の粒径分布を実測し,ボイド強化機構に基づいて計算した敷居応力は実測値のほぼ一致した. 一般に耐熱鋼は多量のクロムを含んでいるので,本研究で得た定量的な知見は耐熱鋼の合金設計や先進耐熱鋼の開発指針として役立つと思われる.
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[Publications] D.Park,F.Masuyama and T.Endo: "Effect of Soluble Nitrogen on the Creep Strength of an Austenitic 25Cr-20Ni Steel"Creep and Fractures of Engineering Materials and Structures, Ed.by T.Sakuma and Y.Yagi, Trans Tech Publications.(Swiss). 445-452 (1999)
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[Publications] I.D.Park,F.Masuyama and T.Endo: "第3次クリープに着目した25Cr-20Niステンレス鋼の高温クリープ挙動解析"日本金属学会誌. 64・12. 1181-1188 (2000)
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[Publications] I.D.Park and T.Endo: "オーステナイト系25Cr-20Niステンレス鋼のべき乗則崩壊域における応力緩和挙動"日本金属学会誌. 64・12. 1189-1195 (2000)