Research Abstract |
加圧無電解Ni-P複合めっきにおけるめっき膜中の粒子共析率,共析粒子径は,めっき温度(つまり成膜速度),および撹拌速度により変化し,耐摩耗性に大きく影響を与える.しかし母材/めっき膜界面へのSiCの共析は皮膜の密着性を低下させる危険性がある.そのため,耐摩耗性および密着性の両特性を満足する皮膜を得るためには,界面にSiC粒子が供析しておらず,皮膜表面は粒径の大きい粒子が多く供析している傾斜組成皮膜の創製が望まれる.そこで,本研究では同一めっき浴で,めっき温度すなわち成膜速度,および撹拌速度を制御することにより,傾斜組成皮膜の創製を行った.この傾斜組成皮膜の評価項目は,成膜速度,耐摩耗性,密着性の3項目とした.めっき浴中のSiC粒子濃度は10kg/m^3,めっき膜は3層とし,基材との界面の第1層は,SiC粒子の供析の少ない,めっき温度363K,撹拌速度140rpmの条件を用い,第2相つまり中間層は成膜時間の短時間化をめざし,めっき温度を高くし,撹拌速度も大きくした.具体的にはめっき温度393K,撹拌速度795rpmを用いた.第3層つまり表面層は耐摩耗性の良好な粒子共析率が多く,共析粒子径が大きい条件,具体的にはめっき温度363K,撹拌速度355rpmを選択した.この条件で創製した傾斜組成めっき皮膜は目標通り界面には粒子が少なく,表面層に粒径の大きな粒子が多く供析した傾斜皮膜となっている.またこの皮膜の創製に要する時間は4.7ksで,第3層単層皮膜を創製するのに有する時間6.6ksの約2/3に短縮される.耐摩耗性についてはスガ式摩耗試験機による1200サイクル後の摩耗量を比較すると,第3層単層の皮膜の摩耗量が7.2mgであるのに対し,傾斜組成皮膜は7.3mgで,同等の耐摩耗性が得られる.当然ではあるが密着性も良好である.
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