1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11650779
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60200200)
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Keywords | ナノ制限空間 / ナノ細孔 / 原子間力顕微鏡 / 分子シミュレーション / 細孔内凝固 / 相転移 / グラファイト |
Research Abstract |
ゼオライト,シリカ,活性炭などの多孔体はナノオーダの細孔を有するが,ナノスケール分子集団の持つ,単一分子とバルク流体との中間的性質の解明が不十分で,ナノ制限空間では「相図」に相当する基礎的情報すら未確立である.本研究では,分子シミュレーションと原子間力顕微鏡(AFM)によりナノ空間内液体の特性に関する直接的知見を得るとともに,分子集団が「感じる」圧力の観点からの,ナノ空間内相挙動の体系化とモデル化を目指している.本年度結果概要は以下の通りである. 1.分子シミュレーション 代表者が開発した独創的MD手法(Miyahara,et al.,J.Chem.Phys.1997)を活用し,固体表面相互作用強度と分子集団の密度・圧力との因果関係を主眼に,種々の系でのシミュレーションをパーソナルスーパーコンピュータで行った. 2.実験的検討 凝固点が常温付近にある有機液体を対象に,典型的制限空間における相転移現象を直接的に切り出すべく,以下のような独創的実験手法の確立に尽力した。AFM装置(現有)に温度制御オプションを組み込んで温度制御を可能とした。できるだけグラファイト化度の高いカーボン微粒子(粒子径5〜10ミクロン)を探索し、これをAFMのカンチレバーに接着し、コロイドプローブを作成することに成功した。劈開グラファイト基板とコロイドプローブ間のフォーカスカーブ測定を、有機液体中で、種々の温度下で行った。本系では有機液体にとってfavorableな空間である。温度とフォーカスカーブとの相関を検討した結果、グラファイト基板とカーボン粒子から構成される擬似スリット状制限空間内で、凝固点が上昇している可能性を見出した。詳細な検討は今後に負うところが多いが、これはシミュレーションによる予測と極めて良好に符合する結果であり、本研究の基礎概念の妥当性を示唆するものである。
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