2001 Fiscal Year Annual Research Report
生成物分離型反応システム設計のためのメンブレンリアクターの特性解析
Project/Area Number |
11650800
|
Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
福原 長寿 八戸工業大学, 工学部, 助教授 (30199260)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小比類巻 孝幸 八戸工業大学, 工学部, 講師 (70215375)
|
Keywords | メンブレンリアクター / エチルベンゼン脱水素反応 / 生成物分離型反応システム / 反応分離 / パラジウム分散膜 / ニッケル系分離膜 / 数値シミュレーション / 水素の選択的透過 |
Research Abstract |
化学反応における平衡論的制約の回避と反応生成物の分離を同時に可能にするメンブレンリアクターは,反応プロセスの集積化や難反応の簡易化,及び逐次反応の高選択化が期待できる反応システムであり,次世代の化学反応システムとして注目されている。本研究では,この反応システムの工業プロセス化において必要となる知見の集積を目的として,これまで以上に厳密な数値シミュレーション解析によってシステム特性の評価を行なった。また,メンブレンリアクター用の分離膜として,高価なPd膜に代わる安価な分離膜を調製するために,無電解めっきで調製したニッケル系無機分離膜の水素透過特性について検討した。本年度得られた成果は以下の通りである。 (1)大きな吸熱を伴う反応であるエチルベンゼンの脱水素反応をメンブレンリアクターで行なった場合について,軸方向と半径方向の温度勾配と濃度勾配を同時に考慮した2次元シミュレーターによってリアクター特性を評価した。その結果,反応器内の温度は入口付近や反応管中心で大きく低下し,そのために分離膜近傍の温度も操作温度より数十℃も低下すること,分離膜の水素透過特性が器内の温度分布に大きく影響されること,操作圧力を増加させてもリアクター出口の転化率がほとんど変わらないこと,Sweepガス速度が早い場合にはリアクター内の水素分圧が小さくなり,反応が促進されること,透過膜面積と触媒充填量がリアクター特性に大きな影響を及ぼしており,それぞれ最適値が存在することなどが推論された。 (2)メンブレンリアクターのシステム的な応用と展開を考え,反応側で吸熱反応を行ない,Sweep側の壁面上で発熱反応を行なった場合のリアクター特性を評価した。その結果,発熱側の壁面上で発せられる熱エネルギー量は小さく,吸熱反応の熱源として発熱エネルギーを利用するためにはSweep側での触媒反応場を多く確保する必要があることがわかった。しかし,この場合には相互の熱エネルギー分布が異なるために,温度分布の局在化が生じる可能性があり,リアクターの制御の困難が予測された。 (3)多孔質ステンレス管上に無電解めっきでニッケル成分を析出させたところ,均一で均質な無機離成分が付着した分離膜を調製することができた。この分離膜の水素透過特性を調べたところ,Pd膜には劣るものの,かなりの水素透過量を示すことがわかり,メンブレンリアクター構築のためのコスト削減が示唆された。
|