2000 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリンπ電子雲により安定化されたケイ素ラジカル種を用いる反応
Project/Area Number |
11650883
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小西 克明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (80234798)
|
Keywords | ポルフィリン錯体 / ケイ素ポルフィリン錯体 / ケイ素ラジカル / 可視光 / ラジカル反応 / 光反応 |
Research Abstract |
近年、ラジカル反応を用いる有機合成、高分子合成に関する重要性はますます高まっており、その精密制御は現代化学の大きな課題の一つである。中でも、ケイ素、スズなどのIVa族のラジカル種は、有機合成の分野では還元剤として、また材料科学の分野ではCVDプロセスの鍵中間体として興味が持たれている。しかし、これらのラジカルは反応性が極めて高く、立体的に嵩高い置換基を導入して安定性を向上させたものが、汎用的に用いられている。研究代表者らは、昨年度までの研究で、ケイ素原子がポルフィリン配位子にキレートされた有機ケイ素ポルフィリン錯体が特異な光ラジカル反応性を示すことを見出してきた。 本年度の研究では、上記の知見を基に、ケイ素ポルフィリン錯体の光反応性についてさらに検討した。その結果、ジアルキルケイ素ポルフィリン錯体とTEMPOなどのニトロキシ化合物との光反応で生成するジニトロキシケイ素錯体において、アキシャル配位子であるニトロキシラジカルが、可視光照射下で可逆的にかつクリーンに交換反応を示すことを見出した。この反応は、可視光照射下において特異的に起こり、暗所下では全く進行しない。すなわち、このニトロキシケイ素錯体は、ポルフィリン部位の光励起によりラジカル種を発生するシリルラジカル等価体とみなすことができ、種々の制御されたラジカル反応への応用が期待できる。
|