1999 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄官能基のα-カルボアニオンの効率的エナンチオ選択的反応
Project/Area Number |
11650890
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
融 健 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (00163957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 良彦 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (70220944)
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Keywords | 有機硫黄化合物 / 不斉合成反応 / β-シリルエチルスルホキシド / α-スルフィニルカルボアニオン / α-スルフェニルカルボアニオン / エナンチオ選択的反応 / 菊酸 |
Research Abstract |
本研究課題は、有機硫黄化合物を用い、従来法とは異なる概念に基づいた不斉合成反応を新たに開発することを目的として行われた。これまでに、β-シリルエチルスルホキシドから発生させたα-スルフィニルカルボアニオンと種々の求電子剤との反応を検討した。その結果、アセトン、アルデヒド、ホスホン酸トリメチルとの反応では、生じたα-炭素の立体選択性は極めて高い。また、α,β-不飽和エステルとの反応では、生成する2つのキラル中心を完全に制御することができ、単一ジアステレオマーを与えることがわかった。さらに、生成したエノラートを水で処理せず、ハロゲン化アルキル、あるいはアルデヒドと反応させると、完全に立体制御された単一ジアステレオマーを与えた。β-ハロアルキルーα,β-不飽和エステルとの反応では、完全に立体制御されたシクロアルカンカルボキシラートが得られ、この方法は、光学活性rans-菊酸前駆体の簡便な合成法になった。以上の驚くべき高立体選択性について、スルホキシドのβ位の置換基の検討、および、遷移状態の分子軌道計算結果から、立体選択性発現にはβ位のシリル基が必要であり、ケイ素とカルボニル酸素が相互作用した6員環遷移状態を経由して反応が進行するという全く新しい反応機構を提唱することができた。また、スルフィドのα-カルボアニオンのエナンチオ選択的反応を行い、不斉配位子としてビスオキサゾリン化合物を用いた時、ケトンとの反応で99%eeと極めて高いエナンチオ選択性を示した。2-ピリジルスルフィドの反応では、誘起される立体化学が逆転するという極めて珍しい立体選択性を示した。この現象を、反応機構の違いによって説明することができた。来年度は、さらに新しい概念の不斉合成反応について研究発展させていく。
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[Publications] Shuichi Nakamura,Yoshihiko Watanabe,and Takeshi Toru: "Efficient Synthesis of Chrysanthemate Precursor from Chiral p-Tolyl β-(Trimethylsily)ethyl Sulfoxide"J.Chem.Soc.,Perkin Trans,1. 3403-3404 (1999)
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[Publications] Shuichi Nakamura,Ryo Nakagawa,Yoshihiko Watanabe,and Takeshi Toru: "Enantioselective Reactions of Configurationally Unstable α-Thiobenzyllithium Compounds"Angew,Chem.Int.Ed.. 39・2. 353-355 (1999)
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[Publications] Shuichi Nakamura,Hirofumi Takemoto,Yoshio Ueno,Takeshi Toru,Terumitsu Kakumoto,and Tsuneo Hagiwara: "Stereoselective Reaction of α-Sulfinyl Carbanion Derived from Chiral 2-(Trialkylsilyl)ethyl Sulfoxides : Evidence for Novel Silicon-Oxygen Interaction"J.Org.Chem. 65・2. 469-474 (2000)
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[Publications] Shuichi Nakamura,Yoshihiko Watanabe,and Takeshi Toru: "Extremely Efficient Chiral Induction in Conjugate Additions of α-Lithio-β-(trimethylsilyl)ethyl Sulfoxide and Subsequent Eletrophilic Trapping Reactions"J.Org.Chem. 65(印刷中). (2000)