2000 Fiscal Year Annual Research Report
エノラート型ケイ素アニオン化学種の生成と新規ケイ素化合物合成への応用
Project/Area Number |
11650898
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大下 浄治 広島大学, 工学部, 助教授 (90201376)
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Keywords | シラジエン / シレン / エノラート / アシルシラン |
Research Abstract |
リチウムシレノラートとアセチレン類との反応を詳細に検討した。その結果、以下のような知見を得た。 1 リチウムシレノラートは、一つ以上フェニル置換したアセチレン類と速やかに反応して付加物を高収率で与える。さらに、付加物の立体的な混み合いが大きい場合には、異性化してリチウムエテニルシレノラートがやはり高収率で生成する。リチウムシレノラートは、ジアルキル置換アセチレンとは反応しない。 2 リチウムエテニルシレノラートのNMRスペクトルによる解析を行い、有機基上の負電荷は主に酸素原子上に局在化しており、シレノラート部位のケイ素-炭素結合は高い二重結合性を有することを明らかにした。通常のリチウムシレノラートの負電荷が、よりケイ素上に局在化しているのとは対照的である。 3 リチウムエテニルシレノラートは、求電子剤と反応し、水、ヨウ化メチルとの反応によってアシル(エテニル)シランヘ、クロロシランとの反応によって2-シラジエン誘導体へと容易に変換することができる。2-シラジエンの生成はNMRスペクトルによって直接確認することができたが、その結果から置換基の影響による平面性の欠如のためか、2-シラジエン内の共役の程度は低いことが示された。また、2-シラジエンの化学的挙動も検討した。 これらの結果から、リチウムシレノラートとフェニル置換アセチレン類の反応は、新規な官能性シリルリチウムであるリチウムエテニルシレノラートの合成に有用であり、さらにリチウムエテニルシレノラートから新規アシルシランであるアシル(エテニル)シランの合成に成功した。また、2-シラジエンは、共役シレンの一つとして重要な化学種であるが、今回のものは、スペクトルによって同定することができた初めての例であり、学術的意義は大きい。
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