2000 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素のα-カチオン安定化効果を活用する選択的なカルボカチオンの発生と縮合環構築
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11650899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市川 淳士 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70184611)
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Keywords | α-フルオロカルボカチオン / ジフルオロ共役ジエン / プロトン酸 / タンデム環化 / 分子内Friedel-Crafts反応 / 縮合環 / 二環式ケトン / ヘリセン |
Research Abstract |
フッ素は、高い脱離能を持ちながら、非共有電子対によりα位のカルボカチオンを安定化する。前年度ではこれらの性質を利用し、gem-ジフルオロオレフィンにFSO_3H・SbF_5を作用させて生じるα-フルオロカルボカチオンによって分子内Friedel-Crafts反応を行い、縮合環の効率合成を達成した。しかし、電子不足のジフルオロオレフィンを直接プロトン化するのに超強酸が必要であったため、プロトン化の起こり易いオレフィン部を共役する位置に導入し、より穏和な条件下における同様のカチオン環化を検討した。 基質として、3位にフェニル基、ベンジル基、あるいは2位にフェネチル基を有する1,1-ジフルオロ-1,3-ジエンを選び、2,2,2-トリフルオロエチルトシラートから調製した。このジエンに、ヘキサフルオロ-2-プロパノール溶媒中種々のプロトン酸を作用させたところ、予期したようにスルホン酸でも充分環化が進行し、インデノン誘導体、ナフトール誘導体、テトラロン誘導体を収率良く与えた。また共役ジエンではなく、水酸基を導入したジフルオロアリルアルコールでも、穏和な同条件下に脱水を伴って環化が進行し、同様のテトラロン誘導体を与えた。アリール基を二つ有するジフルオロジエンではタンデム環化が進行し、最後に脱HFを伴って四環式縮合環を一挙に構築できた。これは、脱水素により[4]ヘリセンへと容易に変換することもできた。 さらに本反応におけるフッ素置換基の効果を明らかにするため、対応するモノフルオロ体及びフッ素を含まないジエンに対し同条件下で反応性を比較したところ、環化体の収率は順に著しく低下した。これは、フッ素置換基の数と共に本カチオン環化の反応性が向上することを示しており、フッ素が反応の活性化に有効に働いていることを確認できた。
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