2001 Fiscal Year Annual Research Report
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11650910
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 健彦 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20220957)
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Keywords | 光化学 / 不斉合成 / 超分子不斉光化学反応 / エナンチオ区別 / 牛血清アルブミン / 不斉反応場 / 不斉光化学反応 / キラリティー制御 |
Research Abstract |
本研究は、現在新しい不斉合成法として注目されている超分子不斉光反応の反応場として高次構造を有する生体高分子であるDNAやポリペプチド・多糖などを化学修飾し、制御された「不斉反応場」として用い、不斉反応場に取り込んだ光反応基質や増感剤による不斉光(増感)反応を行うことにより、高効率な不斉光反応を達成しようとするものである。 本年度はタンパクの持つ不斉環境を用いて超分子不斉光反応を検討した。用いるタンパクは、入手しやすく、取り扱いが容易であり、アミノ酸配列や構造が報告されているウシ血清アルブミン(BSA)を用いた。基質としては、ポルフィリンや芳香族カルボン酸が結合することが知られているため、結合に有利であると思われる2-アントラセンカルボン酸(AC)を基質に選択した。アントラセン誘導体の光環化二量化反応は古くから知られており、1位および2位に置換基を有するものでは、4種類の位置異性体が生成し、そのうちの2つには光学異性体が存在する。 BSAとACは基底状態において相互作用していることがCDスペクトルから明らかになった。そのスペクトルの変化を解析したところ、BSAにはACの結合サイトが二種類あり、第一結合サイトは10^8の結合定数を有しACが1分子だけ結合し、蛍光スペクトルから非常に疎水場であり、第二サイトは協奏的に4分子のACが結合しており、蛍光スペクトルから第一サイトほど疎水的な場ではないことが明らかになった。 次に、実際にBSAを不斉反応場に用いてACの[4+4]光環化二量化反応を行ったところ、反応は良好に進行し、BSAは不斉場として機能することが明らかとなった。これがタンパクを用いて光不斉誘導を行った初めての例である。BSAを不斉反応場として用いた場合に最高の41%のeeが観測された。この値は二分子光反応系で最高の値である。タンパクにはゼオライトやシクロデキストリンにはないサイトの柔軟性がある。これを利用して外部因子で生成物の割合を制御することも必要であるが、ひとつの基質にとどまらず、いくつもの基質に外部因子の調節で対用できるオールマイティーなキラルHostとしての発展が期待される。
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[Publications] T.Wada, M.Shikimi, G.Lem, N.J.Turro, Y.Inoue: "First Photosensitized Enantiodifferentiating Isomerization by Optically Active Sensitizer Immobilized in Zeolite Supercages"Chem.Commun. 1864 (2001)
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[Publications] Y.Inoue, N.Sugahara, T.Wada: "Vital role of entropy in photochirogenesis"Pure Appl.Chem.. 73. 475 (2001)
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[Publications] T.Wada, Y.Takehara, N.Ohta, S.Shiraishi, S.Asaoka, Y.Inoue: "External Electric Field Effectson Exciplex Formation of 1, 1-Diphenylpropene with Chiral 1, 4-naphthalenedicarboxylate oin PMMA polymer Films"J.Photochem.Photobio.A : Chem.. 145. 53 (2001)
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[Publications] T.Wada, H.Sato, Y.Inoue: "Conformation and Recognition Control of Peptide Ribonucleic Acid Containing Pyrimidine/Purine Mixed Sequence"Nucleic Acids Res.Suppli.. 45. 229 (2001)
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[Publications] T.Wada, T.Mori, M.Takamoto, Y.Inoue: "Photoinduced Electron Transfer Oxidation of Olefins with Molecular Oxygen Sensitized by Tetrasubstituted Dimethoxybenzenes : A Non-Singlet-Oxygen Mechanism"Helv.Chim.Acta. 84. 2693 (2001)
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[Publications] T.Wada, T.Mori, Y.Inoue: "Photoinduced Electron Transfer Oxidation of alfa-Methylstyrene with Molecular Oxygen sensitized by Dimethoxybenzenes"Tetrahedron Lett.. 42. 2505 (2001)
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[Publications] T.Wada, T.Mori, Y.lnoue: "Photoinduced Electron Transfer Oxidation of alfa-Methylstyrene with Molecular Oxygen sensitized by Dimethoxybenzenes"Tetrahedron Lett.. 42. 2505 (2001)
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[Publications] 和田健彦(分担執筆): "生命化学フロンティア"化学同人. 300 (2002)