2001 Fiscal Year Annual Research Report
過渡回折格子法を用いた高分子薄膜のキャラクタリゼーション
Project/Area Number |
11650921
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山下 俊 東京理科大学, 理工学部・工業化学科, 助教授 (70210416)
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Keywords | 光熱変換 / 過渡回折格子 / ポリイミド / 薄膜 / 力学物性 |
Research Abstract |
ISTS(Impulsive Stimulated Thermal Scattering)は光熱変換過程を経る過渡回折格子法の一つであり非接触、高速、実時間、空間選択的に材料の力学物性を測ることのできる手法である。これまでの研究によってポリマー薄膜が光架橋反応を起こすに伴いISTSシグナルの周波数が変化し、それからポリマーの力学物性やポリマーのおかれている環境がわかることを明らかにしてきた。 そこで、光熱変換過程においてどのくらいの過渡屈折率変化が誘起されているかを明らかにするために屈折角の過渡変化を測定し、種々の条件における過渡屈折率変化の絶対値を求め、その原因について考察した。 全反射条件における、ポリアクリルアミドゲルの応答は数ミリ秒から数十ミリ秒であり、ゲルの膨潤度が増すほど早い応答を示した。これはゲルが収縮するとポリマー鎖による束縛が増すため、その近傍における溶媒分子の運動性が制限されるためと考えられる。 一方、過渡屈折率変化の絶対値は約10^<-3>のオーダーであり、各条件における屈折率変化挙動を定量化することができた。この過渡屈折率変化の大きさは必ずしもゲルの膨潤度とは相関がなく、また溶媒組成とも対応はしていない。すなわち、熱膨張係数の大きな溶媒であっても屈折率変化は小さくなった。これは、ゲルの光誘起屈折率変化の応答挙動は単に溶媒の熱膨張を反映しているのではなく、光熱変換によって生じたエネルギーを駆動力とする系の膨張と、溶媒とポリマー鎖との水素結合やゲルの膨潤度などによる束縛との拮抗により決まり、その際溶媒分子はその両方の要因として機能しているためであると考えられる。このように光熱変換過程における溶媒分子の特異な働きを初めて明らかにすることができた。
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[Publications] M.Ochiai, H.Sasaki, A.Yamaguchi, T.Yamashita et al.: "Preparetion of Polymers by Admiceller Polymerization Method and their Carbonization"J.Oleo Sci. 50. 683-692 (2001)
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[Publications] S.Okuma, T.Yamashita: "Two photon sensitized polymerzation of vinyl ethers via electron transfer from Zn TTBP"J.Photopolym sci.Tech.
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[Publications] T.Yamashita, M.Sato: "Quantitative estimation of free volume distribution of polymers with photochromic reactions"J.Photopolym.sci.Tech.