2000 Fiscal Year Annual Research Report
アズキおよび近縁種における種子の組織形態と吸水機能に関する作物学的研究
Project/Area Number |
11660014
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
由田 宏一 北海道大学, 農学部・附属農場, 助教授 (90001479)
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Keywords | アズキ / 種子の吸水 / 硬実 / 種子の形態 / 種瘤 / 縫線 |
Research Abstract |
アズキ種子の最初の吸水部位である種瘤(strophiole)の形成過程を調査した.品種エリモショウズを用いて圃場で標準栽培し,萼にマーキングした同一開花日の花器について,開花直後から種子最大期に至るまで3〜5日毎に雌蘂(莢)を採取しFAAで固定した.これらの試料についてパラフィン切片を作成し光学顕微鏡で観察した.また,成熟期に収穫した個体を風乾し,手で脱粒した種子と脱穀機で操作時間を変えて脱粒した種子について,炭素コーティングの後,種瘤の形態を低真空SEMで観察した. 種瘤は開花6日後には種子全体の約1/2を占める大きさとなり,子葉の分化・発育に先立って急速に生長し,9日後には完成時の90%ができあがった.表面中央は種皮の柵状組織が左右からから伸びて接し縫線(raphe)を形成しており,水分の出入りはこの縫線を通して行われると推定された.種瘤柵状層の下には小型の柔細胞が密集し,それを包み込むように中型の柔細胞が,さらに外側に大型の柔細胞がみられ,大型になるほどリグニン様物質が多かった. 種瘤縫線の長さは0.5mm程度であるが,手で脱粒した種子では堅く閉じているのに対し,機械で脱粒した種子では操作時間が長い(衝撃が強い)と縫線部が分離して明瞭な裂け目ができた.これらの種子を吸水テストしたところ,衝撃を与えるほど短時間で吸水する粒が増加し,機械で40秒処理した種子は浸漬8時間後ですべてが吸水していたのに対して,手で脱粒した種子は12時間後でも35%程度が吸水するにすぎなかった. アズキ種子の吸水部位は明らかに種瘤の縫線部分であり,自然の状態では堅く締まってきわめて吸水し難い状態にある.難吸水性を打破するには種瘤への衝撃が有効であるが,実際栽培で行われている機械脱粒では,種子が受ける衝撃の程度が回転数と時間,種子の水分,一度に入れる量などで変動すると考えられ,吸水が一様にならない原因となっていよう.
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