Research Abstract |
昨年度に引き続き、塩生植物ウラギク(Aster tripolium)の耐塩性機構および果菜,葉菜,及び根菜の紫外線ストレス応答に関する実験を行った。 1.UV-B照射による影響を主に形態的な側面から検討した。 キャベツ,ホウレンソウ,トマト(ミニ),ナス,ハツカダイコンを用い,暗期にUV-B照射、明期にUV-B照射した区それぞれにUV-B照射強度を組み合わせ、障害の発生を調査したところ、いずれの野菜も,暗期に高強度のUV-Bを照射した区で,最も強い損傷を受けていたことから,可視光に,UV-B照射による損傷を緩和する効果があることが分かった.トマトが最もUV-B感受性が高かった.UV-Bの波長域別効果を見た結果,生体に極めて強い負の効果を与えたのは,UV-Bの中で280〜290nmの短波長域のUV-Bであった.本葉向軸面では表皮細胞の崩壊部分があり,葉肉細胞の細胞間隙も減少していた.UV-Bを照射された葉は,柔軟性を欠いており,水分含量も減少していた.UV-B照射による生育への影響は,若い組織ほど強く受けた. 2.ウラギク(Aster tripolium L.)の栄養生長期の生理反応(生長,イオン吸収および水分生理),および光合成律速要因について調査した.ウラギクの生長は水ストレス,NaClストレス(300mM)処理によって減少し,水ストレス区で最も減少した.イオン吸収は,NaClストレス区で最もNa^+,Cl^-含量が高く,また葉ではNa^+/K^+比が高く保たれ,積極的なNa^+,Cl^-の吸収がみられた.葉の水ポテンシャルは対照区,水ストレス区,NaClストレス区の順に低下し,浸透ポテンシャルも同様の傾向を示したが,膨圧は対照区とNaClストレス区がほぼ同じであったのに対し,水ストレス区で低下が見られた. ストレス処理区で光合成特性について調べた.両ストレス下で光合成速度,気孔コンダクタンス,蒸散速度は減少した.Na^+含量の増加とともに光合成速度,気孔コンダクタンスは減少していく傾向が見られた.気孔コンダクタンスは葉の水ポテンシャルの低下に伴って減少した. ストレス下での光合成の気孔的律速割合は水ストレス区で最も大きかった.最大光合成速度,CO_2固定効率は水ストレス区でのみ有意に低下した. ウラギクはNaClストレス下では気孔の閉鎖によるCO_2の供給減少のための光合成速度の減少はみられるが,明反応系および暗反応系の活性そのものは保護されていた.一方,水ストレス区は気孔の閉鎖と暗反応系の能力の減少により光合成速度が低下するものと推察される.
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