1999 Fiscal Year Annual Research Report
ユリにおける生態関連形質と分子マーカーの遺伝連鎖分析,および遺伝・連鎖地図の構築
Project/Area Number |
11660033
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
比良松 道一 九州大学, 農学部, 助手 (30264104)
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Keywords | ユリ / テッポウユリ / タカサゴユリ / 生態形質 / 遺伝分析 / 遺伝連鎖地図 |
Research Abstract |
本研究は,ユリ属植物において比較的近縁で,かつ生態的に分化している2種,テッポウユリとタカサゴユリの生態形質の遺伝様式をアロザイムおよびRAPD連鎖マーカーを援用して解明することを目的としている。本年度は,生態形質の種内・および種間文化を明かにするための実験を行い,前年度までの分子マーカーを用いた実験では解明できなかった,以下の点が明かとなった。1)タカサゴユリは,概してテッポウユリよりも実生年目の物質生産が有意に大きく,抽苔・開花する個体が多かった。この差異は,テッポウユリにある一定の期間に生育がほとんどみられなくなる,明瞭な休眠が存在するのに対し,タカサゴユリでは全くそのような傾向がみられなかったことに起因するものと考えられた。したがって,タカサゴユリの「早咲き」の性質は,実生1年目の物質総生産の種特異性に影響すると考えられる休眠の強さと密接に関連していると考えられた。2)しかしながら,物質生産の差異は種間のみならず種内においても観察された。すなわち,テッポウユリでは,分布域の北部に位置する集団においては1年目での抽苔・開花が全くみられず,列島弧を南下し,タカサゴユリの分布域である台湾に近付くに連れて集団内で抽苔・開花する個体の割り合いが増えた。また,タカサゴユリでは,高山帯に分布する集団は,外見的な休眠現象はみられなかったが,より標高の低い集団よりも有意に生長が劣り,抽苔・開花がほとんど見られなかった。また,それらの集団では地下部への物質生産配分が大きくなった。以上のような事実は,テッポウユリは緯度に沿て,タカサゴユリが標高に沿って種内で生態分化が生じていることを意味している。以上の成果を踏まえ,次年度以降の生態遺伝分析を実施するのに適切な交配親を選定し,雑種第一代を育成した。
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