1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11660058
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 雅信 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (60221082)
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Keywords | カイコ / 中腸酵素 / ALP / アルカリ性ホスファターゼ / 遺伝子重複 / 発現調節 / エクソン / イントロン |
Research Abstract |
カイコ中腸で発現する2つのアルカリ性フォスファターゼ、mALP(膜結合型酵素)とsALP(遊離型酵素)の構造遺伝子を、遺伝子ライブラリーから単離し、それぞれ塩基配列を決定した。 両遺伝子は、mALP、sALPの順で同一染色体上に約6Kbの間隔で座乗しており、同じ向きに転写されることが明らかになった。cDNA配列との比較から、mALP遺伝子は6つのエクソン、sALPは4つのエクソンに分断されていることが示された。sALPの3つのイントロンは、mALPイントロンの何れかと相対的に同位置に挿入していた。しかし、同位置のイントロン同士でも塩基配列に高い類似性は認められなかった。(ただし、sALPでは2種類の転写産物のうち片方のcDNA配列しか決定されていない。エクソンはこの配列に基づいて推定した。sALP遺伝子の実際のエクソン-イントロン構造は、選択的スプライシングなどの関与により、さらに複雑と想像される。) 一方、ヒトの3つのアルカリ性フォスファターゼ遺伝子は、いずれも10個のイントロンをもつ。カイコALP遺伝子のイントロンはヒト遺伝子のイントロンの何れかと同位置に存在することが分かった。すなわち、ヒトとカイコのALP遺伝子が、共通祖先遺伝子から進化したものであることが、エクソン-イントロン構造からも裏付けられた。また、無脊椎動物の系統進化の過程で、ALP遺伝子のイントロンの多くが失われてきた可能性が示唆された。この点から、カイコにおいてはイントロン数の多い方が祖先型の遺伝子と考えられる。したがって、mALPからsALPが進化した可能性が高い。
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