2000 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原細菌の鞭毛タンパク質フラジェリンを介した植物の認識と抵抗性誘導機構解析
Project/Area Number |
11660110
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
蔡 晃植 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (00263442)
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Keywords | 過敏感細胞死 / 抵抗性反応 / イネ / 抵抗性遺伝子 / フラジェリン / 活性酸素 / 鞭毛 / Pseudomonas avenae |
Research Abstract |
Pseudomonas avenaeは単子葉植物を宿主とし、褐変、茎の屈曲等を引き起こす植物病原細菌である。本菌の菌株間における宿主特異性は厳密であり、例えばイネ以外を宿主とする菌株はイネに病気を引き起こすことが出来ず、イネを宿主とする菌株は他の単子葉植物に病気を引き起こすことが出来ない。これまでの研究で、この菌の鞭毛を形成するフラジェリンタンパク質が植物の認識に関わっていることを明らかにした。そこで、本年度はフラジェリン分子の認識とその情報伝達機構について焦点を絞って研究を行った。 まず、フラジェリン遺伝子をマーカーイクスチェンジ法で破壊したフラジェリン欠損株を親和性、非親和性両方の菌株で作成した。これら欠損株をイネ培養細胞に接種したところ、非親和性フラジェリン欠損株は抵抗性反応の一つである過敏感細胞死を誘導できなくなるほか、EL2やEL3などの抵抗性遺伝子の発現誘導能も欠失していることが明らかとなった。一方、同様に非親和性菌株特異的に誘導されるPALやCht-1遺伝子は非親和性フラジェリン欠損株を接種した培養細胞でも野生株と同様に発現が誘導されており、これら遺伝子の誘導はフラジェリン分子の認識とは別の経路によって制御されていることが明らかとなった。さらに、抵抗性誘導に重要な役割を示すと考えられている活性酸素の生成についてもこれら欠損株を用いて解析を行った。その結果、非親和性フラジェリン欠損株と野生株を接種した培養細胞とでは活性酸素生成に違いが認められなかった。この時、欠損株を接種した培養細胞では細胞死が誘導されていないことから、イネ培養細胞における過敏感細胞死誘導には活性酸素が直接関与していないか、または活性酸素とそれ以外の因子の協力が必要であることを示している。本研究によって初めてフラジェリン認識の情報伝達機構の一端を明らかにすることが出来た。
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