1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11660120
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊谷 仁 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (20215015)
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Keywords | 誘電緩和 / 電気弾性率 / 導電緩和 / ゼラチン / ガラス / ラバー / ガラス転移 |
Research Abstract |
試料に交流電場を印加すると、周波数の増加に伴い双極子の配向が電場の変化に追随できなるため、誘電率ε'が低下し、誘電損失ε"がピークを示す、誘電緩和現象が観測される。誘電緩和法は、非破壊かつ簡便に、系内の分子の運動性に関する情報を与える特徴を持つ。但し、食品のように水や電解質が系内に含まれる場合には、直流伝導度σ_0の存在のため、低周波領域で起こる緩和のピークが覆い隠されてしまうため、定量的情報が得られなくなる場合もある。そうした場合には、複素誘導率ε^*=ε'-iε"の逆数である電気弾性率M^*=M'+iM"による解析が有効である。 本年度は、電解質高分子であるゼラチンを用い、ガラス状態およびラバー状態における誘導挙動に関して、電気弾性率M^*を用いた解析を行った。 結果としては、LCRメーター(Hewlett-Packard Japan;4284A,4285A)を用いて、周波数領域20Hz-1MHzの範囲で誘導率ε'、誘電損失ε"が測定された。ε"の極大は観測されなかったが、これは直流伝導の影響と考えれらた。そこで、ε'およびε"のデータをM'およびM"に変換した。ε"のピークが確認されない、水分含量ないしは温度領域においてもM"の極大が観測された。得られたM"のデータをHavriliak-Negami式に回帰し緩和時間τ_<HN>を算出し、1/τ_<HN>のアレニウスプロットから活性化エネルギーE_τが求められた。また、σ_0のアレニウスプロットから、活性化エネルギーE_σが算出された。ガラス領域、ラバー領域共に、E_τのおよびE_σの値はほぼ一致した。このことにより観測された緩和は、系内の電解質の伝導により引き起されることが示された。また、ガラス状態での活性化エネルギーはラバー状態のそれよりも高い値を示したが、これは、温度の上昇に伴いゼラチン分子鎖の運動が活発になり、イオン伝導が促進されたためと推測された。
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[Publications] S. Iwamoto, H. Kumagal, Y. Hayashi, O. Miyawaki: "Conductance and relaxation of gelatin fims in glassy and rubbery states"Int. J. Biological. Macromol. 26. 345-351 (1999)