2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11660133
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
有賀 豊彦 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50096757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 日登美 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (20225220)
関 泰一郎 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (20187834)
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Keywords | ニンニク / 含硫化合物 / アリイン / システイントランスポーター / トリスルフィド合成 / がん細胞の分化 / 消化管吸収 / 機能性物質 |
Research Abstract |
植物由来の含硫成分として最も代表的なニンニク(Allium sativum L.)の成分について、吸収と機能発現を中心に検討した。当該成分は、植物体の生育に直接関与するprimary metabolitesではなく、防御機構を担当するsecondary metabolitesと考えられている。事実、植物体内には、そのような機能を発現する前段階の物質、前駆物質として存在していて、微生物による組織侵襲や害虫による組織損傷が契機となって初めて機能物質(ニンニクではアリシンやスルフィド類)が産生されてくる。このような有事の状態は、我々がニンニクを細切、摩砕する場合も当然起きてくるものである。むしろ重大な障害となって、最大限の抵抗(機能物質生産)を示す。ヒトがニンニクを摂取する際には、加熱過程を経て、このような機能発現系を破壊し、前駆体(アリイン)として摂取する場合と、細切して充分機能物質を作らせてから摂る場合とに大別される。近年、これらの前駆物質も動物体内では、幾つかの機能を発現することが明らかにされている。しかし、残念ながら、それらの吸収に関する情報はほとんどない。そこで本研究では、ニンニクにとって機能物質であるスルフィドの生理機能を検討することに加えて、ニンニクにとっては機能前駆物質であるアリインについても検討した。 研究成果は、(1)スルフィドの中でも強い生理活性が期待されるdiallyl trisulfideの化学合成法を確立した。(2)アリイン(S-allyl-L-cysteine sulfoxide)、および、その^<35>S標識化合物を合成し、動物の消化管からの吸収と分解機構を究明した。(3)アリインの吸収・分解が小腸吸収細胞で行われることが推定されたため、ヒト結腸由来がん細胞Caco-2を用いて細胞への取り込みと分解について検討し、当該細包では分解されないが、迅速に吸収されること、その吸収にはcysteine transporterが関与していることを明らかにした。(4)ニンニクとオニオンの油性成分がヒト急性前骨髄球性白血病細胞HL-60に対して、増殖を抑制するとともに、ガン化以前の細胞である好中球(顆粒球)へ分化することを確認した。現在、治験薬として扱われているall-trans retinoic acid(ATRA)による同細胞の分化誘導作用を、これらの油性成分が相乗的に促進することも確認した。 以上のように、本研究によって、主要機能成分diallyl trisulfideの化学合成法を確立することができ、S-allyl-L-cysteine sulfoxideの消化管からの吸収と分解、細胞表層の受容体の種類などについて、それぞれ確認および推定することができた。今後は、当該成分の吸収機構の動力学的側面からの解明に加えて機能発現に至る物質代謝機構をより詳細に検討したい。また、ガン細胞の分化誘導に関しては、活性成分を特定し、分化誘導メカニズムを究明したい。
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[Publications] Seki, Taiichiro: "Antithrombotic effect of garlic"Platelets. 12. 185 (2000)
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[Publications] 有賀 豊彦: "ネギ属植物の機能性-硫黄化合物総論"臨床栄養. 99巻1号. 13 (2001)
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[Publications] 関 泰一郎: "ネギ属植物の機能性-抗がん作用"臨床栄養. 99巻4号. 397 (2001)
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[Publications] 有賀 豊彦: "ネギ属植物の機能性-ネギ属植物の調理と機能性"臨床栄養. 99巻7号. 857 (2001)
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[Publications] Oi, Yuriko: "Allyl-containing sulfides in garlic increase uncoupling protein content in brown adipose tissue,and noradrenalineand adrenaline secretion in rats"Journal of Nutrition. 99巻1号. 336-342 (2001)
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[Publications] Ariga, Toyohiko: "Garlic-like but odorless plant Allium ampeloprasum'Mushuu-ninniku'"Journal of Horticulture. (発表予定). (2002)
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[Publications] 有賀 豊彦: "ガン、脳卒中、心臓病を防ぐ食材辞典"大澤俊彦監修、ビタミン文庫、マキノ出版. 254 (2002)