1999 Fiscal Year Annual Research Report
癌腫病菌カバノアナタケの感染によるシラカンバ植物体内での抗菌性化合物の生成
Project/Area Number |
11660139
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
横田 信三 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (60210613)
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Keywords | ファイトアレキシン / ファイトアンチシピン / カバノアナタケ / シラカンバ / 樹病学 |
Research Abstract |
1.無菌シラカンバ植物体の大量培養及び1年生無菌シラカンバ植物体の育成:腋芽培養によって、3ヶ月生の無菌シラカンバ幼植物体を大量に培養した。1回の培養によって300本以上の植物体を得、その内実験には180本使用した。今年度においては3回実験を行い、計540本の幼植物体を使用した。一方、バーミキュライトを用いた培地に幼植物体をそのまま移植して培養することにより、1年生の無菌植物体を15本育成することが出来た。これらの植物体は、次年度の実験に使用する予定である。 2.抗菌性化合物の同定及び定量:幼植物体を液体窒素で急速凍結して粉末状にし、これをメタノール及ぴジクロロメタンで抽出後、抽出液を酢酸エチルとジクロロメタンで再抽出した。得られた抽出物をガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)によって分析を行った。その結果、処理区(菌接種)及び対照区1(無傷)、2(傷害)何れの抽出物においてもβ-シトステロールが検出・同定された。この化合物がファイトアンチシピンである可能性が考えられたので、GC-MSの選択イオン検出法を用いて、処理区及び対照区1、2毎に定量した。その結果、処理区では4.7mg/g生重量、対照区1、2ではそれぞれ10.2,26.3mg/g生重量であった。対照区2で対照区1に比べて倍以上に増加しているが、これは傷害による影響と考えられる。処理区で含有量が減少しているが、これは菌によってβ-シトステロールが代謝された可能性が考えられる。 3.β-シトステロールの抗菌活性試験:β-シトステロールがファイトアンチシピンであるかどうか確認するため、濾紙ディスク法による抗菌活性試験を行った。β-シトステロールを含む濾紙ディスク(0,1,10,100,1000μg/mlの5濃度)をシャーレ内の培地に置いて菌を培養し、菌糸の伸長を観察した結果、2菌株(IO-U1株、IO-B2株)とも100μg/mlの濃度で菌糸伸長が強く阻害された。従って、β-シトステロールがファイトアンチシピンであることが判明した。 尚、本研究成果の一部は、第17回日本植物細胞分子生物学会大会(札幌、1999年7月23〜24日、要旨集p57)及び第16回国際植物会議(セントルイス、アメリカ、1999年8月1〜7日、要旨集p650)で発表した。また、本研究の成果を第50回日本木材学会大会(京都、2000年4月3〜5日、要旨集p420)で発表する予定である。
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