2001 Fiscal Year Annual Research Report
癌腫病菌カバノアナタケの感染によるシラカンバ植物体内での抗菌性化合物の生成
Project/Area Number |
11660139
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
横田 信三 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (60210613)
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Keywords | ファイトアレキシン / ファイトアンチシピン / カバノアナタケ / シラカンバ / 樹病学 / プロテオミクス |
Research Abstract |
本研究では、カバノアナタケの感染によって、シラカンバ幼植物体内に生成する特異的タンパク質を検出するために、感染植物体から粗酵素液を調製し、これを用いて二次元電気泳動を行った。カバノアナタケIO-B2株を接種したシラカンバ幼植物体(処理区)、対照区1(無菌・無傷)及び対照区2(傷害)それぞれの植物体を、菌接種後0〜7日間毎日採取した。これらを液体窒素で急速凍結後、粉砕し、酵素抽出緩衝液(pH7.5)を用いて粗酵素液を調製した。得られた粗酵素液をメンブランフィルター濾過及びゲル濾過を行い、色素結合法によってタンパク質含量を測定した後、二次元電気泳動に供した。一次元目の泳動はIPGゲルを用いて行い、次の2段階の条件で行った。段階1:電圧500V、電流2mA、電力5W、時間1分;段階2:電圧3,000V、電流2mA、電力5W、時間7時間30分。泳動後IPGゲルをSDS平衡化し、二次元目の泳動(SDS-PAGE)をExcelGel SDSゲルを用いて次の条件で行った。段階1:電圧600V、電流20mA、電力30W、時間30分;段階2:電圧600V、電流50mA、電力30W、時間1時間10分。泳動後ゲルを銀染色し、セロファンシートに包んで室温で2日間乾燥した。乾燥後のゲルをスキャナーでコンピューターにその画像を取り込み、その画像をPhotoShop及びIllustratorで解析し、菌感染に特異的なタンパク質の等電点及び分子量を、マーカーを基に算出した。本研究では、菌感染後1日目及び6日目の各粗酵素液について解析を行った。1日目及び6日目の各処理・対照区全てにおいて、pH3-7、分子量100kDa以下の部分にかけて、特に多くのタンパク質スポットが出現した。更に詳細に、各スポットを処理区と対照区1,2との間で比較した結果、1日目では、9個のスポットが菌感染後、消失又は薄くなり、一方、4個のスポットが濃くなっていた。特に、pl=5.3、Mw=39.9kDaのスポットは、菌感染によって特異的に出現したタンパク質であることが判明した。6日目においては、6個のスポットが消失又は薄くなり、2個のスポットが濃くなっていた。また、1日目と6日目における各2つのスポット(pl=3.1,Mw≒100kDa;pl=3.3,Mw≒95kDa)が同一のタンパク質であることも明らかになった。尚、本研究成果の一部を、第10回分子レベル植物・微生物相互作用に関する国際会議(マジソン、米国、2001年7月10〜14日)で発表した。
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