2000 Fiscal Year Annual Research Report
水産業に係る沿岸域の水環境の経済評価と地域経済に関する地域学的研究
Project/Area Number |
11660175
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
山本 充 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (30271737)
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Keywords | 水産業 / 水質汚濁 / 環境費用 / 特化係数 / 産業連関表 / 海浜利用 / 離散的選択モデル / 共分散構造分析 |
Research Abstract |
産業連関表の部門別道内生産額,および国勢調査データの産業別就業者データに基づく産業部門別特化係数により,北海道において農林水産業は全国平均よりも大きく特化していることが明確になったが,その関係から食品製造業も同様に特化している傾向が窺われる。しかしながら,北海道の水産加工業(特に食品加工業)においてはその原材料調達を輸入に大きく依存しており,地域の水産業との産業連関度が脆弱であることも明らかである。水産加工業との連関が強いのは飼肥料製造業部門である。このことは,北海道の水産業の生産物は,生鮮品としての付加価値が大きいことを示唆しており,海域の環境状態が水産物の品質に大きく影響することを意味している。しかし,水産物(特に生鮮)の価格と環境との相関は,北海道の海域が瀬戸内海などの閉鎖性海域とは異なり外海性であること,加えて陸域からの環境負荷が希釈効果などにより大きな水質汚濁として現れていないことから,価格との関係が明示的に現れにくいことが明確になった。 水質汚濁に関する環境費用としては,維持費用評価法により約265億円と推計され,これは負担されない環境費用であるため内部化される対策が必要であることが示された。 次に,海浜などのレクリエーション利用による便益については,利用者の選好を反映できる離散的選択モデル(LOGITモデルなど)により補償偏分の変化量から計測・評価することが有効であると判明した。さらに共分散構造モデルの適用により,環境の認識行動は実際のレクリエーション活動などによる環境質の認識が,環境改善意識へと結びつき,環境改善行動や環境改善の必要性を意識する因果関係が明確になった。このことは,海浜利用の便益を利用者が認識することができ,環境保全費用の受益者負担を意識できること示唆するものと考えられた。
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