2001 Fiscal Year Annual Research Report
石灰基質穿孔機構の解明:環形動物多毛類スピオ科の穿孔開始と孔道拡大のメカニズム
Project/Area Number |
11660176
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大越 和加 東北大学, 農学部, 教務職員 (20233083)
|
Keywords | 環形動物 / 多毛類 / スピオ科 / Polydorids / 穿孔機構 / 石灰基質 |
Research Abstract |
環形動物スピオ科に属する多毛類は、さまざまな石灰基質に穿孔する種と、岩盤の隙間、砂泥底等に生息する穿孔しない種がいる。穿孔の有無は、穿孔という一つの能力を持つか持たないかによりただ単に生息タイプが異なるのみならず、進化の方向をも示唆する大きな特性であることが考察されている。本研究は、有用貝類に穿孔することにより防除・駆除の対象となるスピオ科多毛類について、包括的に「穿孔」という特性を捉え、その穿孔機構の解明を目指すものである。 スピオ科多毛類の穿孔に大きく関係していると推察される第五剛毛節の球状物質は、大きく変形した第五剛毛に近接した位置に、幼生が貝殻に定着し穿孔を開始してしばらくの期間出現し、その後消滅することから、貝殻の初期穿孔機構に関与しているだろうと思われた。また、穿孔を開始し、孔道を形成、または伸長・拡大する機構としては、貝殻微細構造から体全体から分泌される物質(酸)により、貝殻の有機成分の結合を弱め、同時に体全体の腹足剛毛や第五剛毛を用いて物理的に磨耗して行われると考えられた。孔道の伸長・拡大は、孔道内の多毛類の上下運動と回転運動で行うことが推察された。穿孔する種のグループの幼生のみに第五剛毛節に球状物質が出現すること、第五剛毛節が大きく変形していない種のグループには穿孔する種がみられない、もしくは少ないこと、そしてスピオ科全体に占める第五剛毛の変形している種の少なさから、第五剛毛節はこれらスピオ科の進化において重要な意味を持ち、進化の方向としては、第五剛毛節が変形し穿孔する特性を有する方向に向かっていると考えた。国際多毛類学会で成果を発表した。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Waka Sato - Okoshi, Masashi Takatsuka: "Polydora and related genera (polychaeta, Spionidae) around puerto Monbb and Chiloe Island (Chile), with description of a new species of Dipolydora"Bulletin of Marine Science. 68(3). 485-503 (2001)
-
[Publications] Waka Sato - Okoshi: "Population dynamics and production of Polydora and related genera (Polychaeta : Spionidae) inhabiting oyster beds in Sasuhama, North Japan"Hydrobiologia. in press.
-
[Publications] Waka Sato - Okoshi: "Population dynamics and production of Polydora and related genera (Polychaeta : Spionidae) inhabiting oyster beds in Sasuhama, North Japan"International Polychaete Conference Program & Abstracts. 69 (2001)
-
[Publications] Waka Sato - Okoshi: "Spiondpolychnetes that damage commercially important molluscs in Japan"International Polychaete Conference Program & Abstracts. 166 (2001)