1999 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンウナギの産卵と回遊に影響を及ぼす海洋変動現象に関する研究
Project/Area Number |
11660179
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 伸吾 東京大学, 海洋研究所, 助手 (90202043)
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Keywords | ニホンウナギ / シミュレーション / 回遊 / エルニーニョ / 塩分フロント / 北赤道海流 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ニホンウナギ資源と海洋変動現象の係わりに焦点を絞り、ニホンウナギの産卵場が位置する北赤道海流と幼生を日本沿岸に輸送する黒潮の物理的な環境特性と、それらの経年的な変動がウナギ幼生の輸送拡散過程に果たす役割を検討し、ニホンウナギ資源に与える海洋変動現象の影響を定量的に解明することにある。本年度は、そのうち、北太平洋における流れの大循環モデルを用いたウナギ幼生の輸送拡散に関する数値シミュレーションを行い、今までに整理されてこなかった東アジアにおけるニホンウナギの分布に係わる諸問題の解決を試みた。それらの諸問題とは、(1)なぜ過去に沖縄東南方が産卵場と推定されてしまったのか、(2)黒潮本流は台湾の東側を通過するにもかかわらずなぜ台湾では西岸で採捕量が多いのか、(3)なぜ韓国では採捕量が少ないのか、といった生物の生理にも係わる疑問であり、英国のサウザンプトン海洋研究所で開発されたOcean Circulation and Climate Advanced Modelling(OCCAM)を用いた数値シミュレーションから北太平洋における三次元構造の流速場を作成して検討を行った。その結果、(1)は、沖縄の東南海域に大きな渦が形成されるので、その中に幼生が取り込まれてしまい産卵場の推定に誤りを生じさせたことによるもの、(2)は、表層に分布する幼生が、黒潮の本流から離れて台湾の西岸に輸送されることによるもの、(3)は、韓国沿岸に幼生がたどり着く時期は、日本沿岸に比べて半年以上遅いことから、河川への遡上時期を逸ってしまうことによるものであることが分かった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Shingo Kimura: "Numerical simulation to resolve the issue of downstream migration of the Japanese eel"Marine Ecology Progress Series. 186. 303-306 (1999)
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[Publications] 木村 伸吾: "仔魚の輸送機構"月刊 海洋. 号外18. 53-59 (1999)